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アニコム パフェからのお知らせ

アニコム パフェからのお知らせ

2026年6月8日
猫の骨軟骨異形成に関連する遺伝子変異、重症リスクが高い型の割合が減少
国内8,610頭の品種横断的な変異頻度の調査により、適切な繁殖管理に向けた遺伝子検査の重要性が示唆

アニコム パフェ株式会社(代表取締役社長 安宅 快、以下 アニコムパフェ)とアニコム先進医療研究所株式会社(代表取締役社長 堀江 亮、以下 アニコム先進医療研究所)は、麻布大学(学長 村上 賢)と共同で、スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症および折れ耳形質との関連が報告されているTRPV4(※1) c.1024G>T変異について、国内の猫8,610頭を対象に大規模な遺伝子解析を行いました。その結果、2017年から2024年にかけて、スコティッシュ・フォールドにおける同変異のホモ接合個体(※2)の割合が14.2%から1.9%へ、統計的に有意に低下していることが確認されました。一方で、ヘテロ接合個体(※3)と野生型個体の割合については、統計的に有意な変化は認められませんでした。また、同変異はスコティッシュ・フォールドで最も高頻度に確認されたものの、アメリカン・カールやマンチカンなど、他の品種でも検出されました。


本研究成果は、遺伝子検査を活用した慎重な繁殖判断が、遺伝性疾患リスクの把握・低減に資する可能性を示すものです。あわせて、過去にスコティッシュ・フォールドとの交雑が疑われる品種では、遺伝子検査の実施を検討することの重要性も示されました。本研究は、Wiley社が刊行する動物の遺伝学研究を扱う国際的な学術誌『Animal Genetics』にて2026年5月10日にオンライン公開されました。

■本研究の背景
スコティッシュ・フォールドは、特徴的な折れ耳で知られる人気猫種です。この折れ耳形質は古くから研究が行われており、常染色体顕性(優性)で遺伝することが知られていました。2016年には、TRPV4遺伝子のc.1024G>T変異(以下、TRPV4変異)が、スコティッシュ・フォールドの折れ耳形質および骨軟骨異形成症と関連することが報告されました。この変異を1つ有するヘテロ接合個体では折れ耳形質が認められますが、臨床症状の程度には個体差があるとされています。一方、この変異を2つ有するホモ接合個体では重度の臨床症状が認められることが多く、動物福祉の観点から、ホモ接合個体を生じる可能性のある交配を避けることが重要とされています。 近年、この変異を対象とした遺伝子検査が利用可能となってきましたが、実際にスコティッシュ・フォールド集団におけるTRPV4変異の頻度がどのように変化したのかについては、十分な実証データがありませんでした。また、この変異は主にスコティッシュ・フォールドで確認されるものの、過去の報告では、スコティッシュ・フォールドとの交雑が疑われる他品種でも検出されていました。一方で、同変異が他の猫種にどの程度分布しているのかについての、品種横断的に調査した報告は限られていました。
こうした背景から、猫の遺伝性疾患対策においては、単に特定の猫種における変異の有無を調べるだけでなく、長期的な変異頻度の変化や、他品種への分布状況を明らかにすることが重要です。これにより、遺伝子検査を活用した繁殖管理が、疾患リスクの低減や動物福祉の向上にどのように貢献し得るのかを、科学的データに基づいて評価することが可能になります。
本研究では、日本国内の猫集団におけるTRPV4変異の実態を明らかにするため、2017年から2024年に生まれた猫を対象に、同変異の遺伝子型データを解析しました。解析対象は、スコティッシュ・フォールドを含む14品種、合計8,610頭であり、各品種100頭以上を含む大規模なデータセットを用いました。

■本研究の成果
1.スコティッシュ・フォールドにおけるホモ接合個体の割合が大きく減少
本研究は、遺伝学的知見を活用しながら、疾患リスク低減と動物福祉向上の両立を目指すものです。2017年から2024年に生まれたスコティッシュ・フォールドを対象に解析した結果、ホモ接合個体の割合は、2017年の14.2%から2024年には1.9%へと統計的に有意に低下しました。一方で、ヘテロ接合個体と野生型個体の割合には統計的に有意な経年的変化は認められず、ヘテロ接合個体の割合は2017年の39.3%に対し、2024年は51.5%、野生型個体の割合は2017年の46.4%に対し、2024年は46.6%でした。
この結果は、ホモ接合個体を生じる可能性のある交配を避けるなど、遺伝子検査を活用した慎重な繁殖判断が行われている可能性を示唆しています。この減少はTRPV4変異を対象とした検査が利用可能となった時期と一致しており、検査の普及や繁殖管理への活用等が影響している可能性があります。

2.TRPV4変異はスコティッシュ・フォールド以外の品種でも確認
品種別の解析では、TRPV4変異のホモ接合およびヘテロ接合の頻度は、14品種の中でスコティッシュ・フォールドが最も高いことが確認されました。一方で、スコティッシュ・フォールド以外にも、アメリカン・カール、ノルウェージャン・フォレスト・キャット、マンチカン、ミヌエットでもヘテロ接合個体が検出されました。また、マンチカンではホモ接合個体が3頭確認されました。
これらの結果は、TRPV4変異がスコティッシュ・フォールドのみに限定されず、一部の他品種にも分布している可能性を示しています。特に、アメリカン・カールやマンチカンでは、過去にスコティッシュ・フォールドとの交雑が疑われる報告があり、本研究の結果も、こうした歴史的な交雑の影響を反映している可能性があります。

■今後の展望
本研究は、日本国内の大規模な猫集団を対象として、TRPV4変異の経年的変化と品種横断的な分布を示した点に意義があります。特に、スコティッシュ・フォールドにおけるホモ接合個体の割合が大きく減少したことは、遺伝子検査を繁殖管理に取り入れることで、疾患リスクが高いと考えられる遺伝子型の出生割合を低減できる可能性を示す重要な知見です。
一方で、本研究は日本国内の猫集団を対象としたものであり、国や地域によって品種集団の遺伝的背景や繁殖慣行が異なる可能性があります。また、スコティッシュ・フォールド以外の品種におけるTRPV4変異の臨床的影響については、現時点では十分に明らかになっていません。そのため、今後は複数の国・地域を対象とした調査や、遺伝子型と臨床症状との関連を検討する追加研究が必要です。

本研究の成果は、猫の遺伝性疾患対策において、科学的根拠に基づく繁殖管理の重要性を示すものです。今後、遺伝子検査を適切に活用することで、疾患リスクの低減と動物福祉の向上に貢献することが期待されます。

今後も当社グループでは、さまざまな研究を通じて獣医療の発展と動物福祉の向上を目指してまいります。

【 用語解説 】
※1 TRPV4:細胞内外のカルシウムの流れを調整し、軟骨細胞が刺激に応答する仕組みに関わる遺伝子。
       猫では、耳や関節などの軟骨の発達への関与が報告されています。
※2 ホモ接合個体:TRPV4変異を2つ有する個体。重度の臨床症状が認められることが多く、
          動物福祉の観点から、ホモ接合個体を生じる可能性のある交配を避けることが重要とされています。
※3 ヘテロ接合個体:TRPV4変異を1つ有する個体。折れ耳形質が認められますが、臨床症状の程度には個体差があるとされています。
           本研究は特定の交配や繁殖を推奨するものではありません。

【原論文情報】
掲載誌: Animal Genetics
原題:Genetic evidence of a recent decline and crossbreed distribution of TRPV4 c.1024G>T variant in domestic cats
著者名: Hisashi Ukawa 1, Ayako Akashi 1, Hinako Hayashi 1, Saaya Hiyoshi-Kanemoto 2, Haruka Onishi 1, Kai Ataka 1, Yuki Matsumoto 1,2,3
論文リンク:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/age.70118

1:アニコム パフェ株式会社 検査事業部
2:アニコム先進医療研究所株式会社 研究開発部
3:麻布大学データサイエンスセンター



【お問い合わせ先】
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