がんのしくみとがん医療 第4回
がんになったら、ボクはどういう選択をするかな……
穴澤:がんの治療についてなんですが、腫瘍が取れない場合にまず浮かぶのは「抗がん剤」なんですが、具体的に抗がん剤の働きとはどんなものなんでしょう。
藤田:抗がん剤とは、がん細胞をやっつける薬のこと。でも、正常な細胞もやっつけちゃうんです。だから非常に難しい。がん細胞に、より浸透性が高いんだけど、正常細胞にも浸透してしまうから。
穴澤:正常細胞に抗がん剤が浸透すると、どうなるんですか?
藤田:死ぬ思いをするよ。髪の毛も全部抜けちゃうし。
穴澤:あれは毛根細胞がやられちゃうからなんですか。
藤田:そう。とにかく細胞を死ぬぎりぎりのところまで弱らせて、がんをやっつけようというものだから。だから私はこれはまともじゃないと思うんですよ。やり方として。本当は免疫力を高めて、本来持っている力でがんをやっつけるというのがいいと思う。
穴澤:どうして抗がん剤は、がん細胞だけに届くようにできないんですか?
藤田:それができるようになればいいんだけど、今のところはね。ただ、がん細胞だけに効くようなやり方もありますよ。
穴澤:それはどんな方法なんですか?
藤田:簡単にいうと、抗がん剤をウイルスにくっつけてがん細胞まで運ばせるんですよ。ウイルスというのは親和性がある細胞が決まっているから、がん細胞に親和性のあるウイルスを使ったりして、がん細胞に感染させる、というような方法です。
穴澤:その方法が確立できると、現在のように副作用に苦しむ人も減るかもしれませんよね。でも、現在使われている抗がん剤だと免疫力も同時に落ちてしまうわけでしょ。
藤田:落ちますね。
穴澤:だけど、健康なときと同じように毎日がん細胞が3000個できるのは同じでしょう。だったら、新しく出てきたがん細胞も攻撃できない、ということになりません?
藤田:だからね、抗がん剤って、たとえそれでがんが治ったとしても、本当の意味で延命しているかどうかはわかんないんだよね。
穴澤:がんは治ったけど、生きる力を一度ドーンと落としているわけですもんね。
藤田:一度抗がん剤を使った人は、もう二度と、それこそ死んでも嫌だというね。あんなに苦しいことはないそうですよ。初めは知らないから使っちゃうけども。
穴澤:でも抗がん剤といっても種類がありますよね。たとえば日本でまだ認可されていない、医療先進国の抗がん剤だって副作用はあるんですか?
藤田:多少の差はあっても、副作用はありますよ。それをどうやってがん細胞だけに効かせるかというのを今一生懸命やっているんです。
穴澤:最近は犬の抗がん剤もあるっていいますけど、あれも副作用がひどいんでしょうかね。
藤田:うーん、私は専門じゃないからわかりませんけど、副作用がないということはないでしょうね。薬には必ず副作用というものがありますから。
穴澤:教授がもしがんになったら、抗がん剤を使います?
藤田:私は絶対使わない(笑)。それよりね、生きている間を楽にした方がいいから。どうせいつか死ぬんだし(笑)。
穴澤:そうなんですね。ボクはどうだろうなぁ。痛いの嫌だしなぁ(笑)。
藤田:そりゃ私だって痛みを抑える薬くらいは打ってもらいたいよ(笑)。
穴澤:それだったらボクも絶対抗がん剤は使いたくない(笑)。だけど、富士丸がもしがんになったとしたらどうだろう、悩むなぁ。
藤田:自分はさっさと死んでもいいんだけど、愛する人とか家族ってことになるとね、そこはちょっと考えるよね。
穴澤:腫瘍を取ったあと、あるいは取れない場合の抗がん剤以外の治療というと、ほかにどんな方法があるんですか? 先月のテーマ「免疫力とアレルギー(2)」でちょっと先走っちゃった感もありますが(笑)。
藤田:この前話した「サイモントン療法」なんかは、今アメリカで盛んに行われていますね。
穴澤:毎日NK(ナチュラルキラー)細胞とがん細胞の絵を描かせるってヤツでしたよね。やっぱりがんにおいてもメンタル面というのは重要なんですね。
藤田:重要ですよ。私の知り合いにこんな人がいるんですよ。彼はがん検査で腫瘍が見つかって手術することになったんですね。ところが、おなかを開けてみたら転移がひどくて、医者も諦めて何もしないまま閉じちゃった。
穴澤:末期がんというヤツですね。
藤田:余命は3カ月といわれたんです。そこで彼は家族を集めて話したんです。「どうやら私は死ぬようだ。だから最後に、もう一度だけハワイに連れて行ってくれないか」と。若い頃にハワイでアルバイトをしていて、そのときのいい思い出があったらしくてね。
穴澤:行けたんですか? 末期なのに。
藤田:行ったんですよ。それまで家族もバラバラでうまくいってなかったのに、お父さんとの最後の旅行だからと子どもたちも必死でアルバイトなんかをしてね。
穴澤:何だかいい話ですね。
藤田:そこで終わりじゃないんですよ。ハワイに着いたときは車椅子でぜんぜん元気なんかなかったのに、数日いるうちにだんだん元気になって、最終的には自力で歩けるようになったんです。
穴澤:すごいですね、その人。よっぽど嬉しかったんでしょうね。
藤田:でね、しばらくして日本に帰ってきたんです。で、元気なまま3カ月経ってもぜんぜん死なない。だから、もう1回ハワイに行きたいと言い出して、また家族で行ったんです。
穴澤:よっぽど好きなんですね、ハワイが。
藤田:そしたらますます元気になって、車椅子なんて全く必要なくなった。
穴澤:その人、結局どうなったんですか?
藤田:今でも元気です。普通に働いてますよ(笑)。あれから3年も経つというのに。
穴澤:そんなことってあるんですか? その場合、がん細胞というか、腫瘍はどうなっているんでしょう?
藤田:どうなんでしょうね。ただ、腫瘍がおとなしくなることはあるし、免疫にやられて小さくなったり、消えたりすることはありますよ。
穴澤:すごい。やっぱりメンタル面って大きいんですね。
藤田:笑ったり好きなことをしたりすると、NK細胞の活性は上がるからね。結果的にがんを抑制するということは、医学的にも十分説明がつくわけです。
穴澤:抗がん剤より、ボクはそっちの方がいいなぁ。
藤田:私もそう思っているんですよ。もしがんだっていわれたら、もう好きな所に行って好きなことさせてくれって。
穴澤:教授はどこへ行きたいんですか?
藤田:インドネシア。それはもう決まってる(笑)。
穴澤:自分の死に場所は決めていると(笑)。でもそうですよね、ボクも富士丸ががんになったら、できれば自然の中でのんびりさせてやりたいなぁ。その方がヤツも嬉しいだろうし。
藤田:そうかもしれないよね。ボクだってさんざん好きなことやってきたし、好きなことやって死ねるならそれでいいやと思うんだけど。でも、実際死ぬ間際になるとどうかな。
穴澤:そうかもしれないですね。今はボクもそう思っていても、いざ自分が余命3カ月とかいわれたりすると。
藤田:私もそうなったら暴れるかもわかんない(笑)。
穴澤:暴れないでくださいよ(笑)。でも、どんな選択であれ、自分らしいやり方を選んで最期を迎えられたらいいですよね。がんについていろいろ聞かせていただいてありがとうございました。
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