元気丸で行こう!

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がんのしくみとがん医療 第1回

団体行動が取れないヤツらが、団体を作る?

穴澤:「元気丸で行こう!」今月のテーマは「がん」なんですが、ずばり「がん」とは何なんでしょう?

藤田:我々人間も含めて生物の身体というのは、ひとつひとつの細胞がいろいろな制御のもとに働いているんです。

穴澤:脳からの指令ですか?

藤田:脳だけじゃないですよ。ホルモンとか、神経系とか、免疫系とか、さまざまな制御システムが働いているんです。がん細胞というのは、簡単にいえば、この制御を無視して暴走する細胞のことです。

%E6%9A%B4%E8%B5%B0%EF%BC%9F.JPG(暴走? NO、ダッシュ!)

穴澤:暴走とは、具体的にどんなふうに?

藤田:人間の身体というのは、約60兆個の細胞からできている。で、そのうち約2%が毎日の新陳代謝などで新しく生まれ変わってるんですよ。細胞が増えるばかりじゃ困るから、死ぬべき細胞は死んでくれないといけない。そこで、不要な細胞は自滅するようなシステムになっているんですよ。

穴澤:いわゆる「アポトーシス」というやつですね。

藤田:よく知ってるね(笑)。お母さんのおなかの中で、赤ちゃんの手ができるときだって、指の間の細胞がどんどんアポトーシスとして死んでいく。で、最終的に手の形になるというように、不要な細胞は自ら死んでいくような制御がかかっているわけですよ。その制御を無視してどんどん増えていくのが、がん細胞です。

穴澤:「死になさい」という命令があっても、「死なねーよ」と反抗するわけですね(笑)。ま、細胞だって好き好んで死にたくはないでしょうけど。

藤田:だけど、身体というのは、そういうふうにできている。じゃないと、細胞は増えるばっかりで生まれ変わらない、つまり成長しない。人間の身体の働きを細胞の団体行動だと考えると、がんというのはその団体行動が取れないヤツらなんですよ。穴澤くんのように(笑)。

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穴澤:ほっといてくださいよ(笑)。確かに、団体競技とか昔から大嫌いですけど。

藤田:まぁ、これを人間に置き換えると、死ぬだの死なないだのと物騒な話になりますけど、細胞レベルで見ると、生物の身体の中では日々起こっている必要不可欠なことなんですよ。

穴澤:ところで、がん細胞というくらいだから、がんも細胞なんですよね?

藤田:そう。もともとは正常な細胞ですよ。それがある時おかしくなる。

穴澤:あくまでイメージなんですけど、がん細胞って、黒いんですか?

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藤田:黒くないよ(笑)。色じゃなくて、問題なのは性質。それに正常な細胞がいきなりがんになるわけでもないんですよ。

穴澤:正常細胞が、がん細胞に変身するのにステップがあるんですか?

藤田:ありますよ。まず正常細胞が「発がん性物質」などの影響で「変異細胞」というのに変わる。この段階では、まだがん細胞ではないんです。

穴澤:予備軍、みたいなもんですか。

藤田:はい。それこそ見た目も正常細胞と区別がつかないほどなんですけど、さらに「発がん促進物質」が入ってくると、それが発がん性物質を助けて、変異細胞ががん細胞になるというわけです。

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穴澤:「発がん性物質」と「発がん促進物質」というのがあるんですね。さっき「正常細胞が発がん性物質などの影響で」といわれましたが、「など」って、ほかには何があるんですか?

藤田:単純に細胞が増えるときにDNAのコピーに失敗することもあります。だから、がん細胞というのは、健康な若い人でも毎日約3000個くらいはできているんですよ。だけど、それはNK(ナチュラルキラー)細胞なんかがやっつけているんです。

穴澤:「Th1」が後押ししてるヤツですね。さすがにもう覚えましたよ(笑)。

藤田:ところが年をとってくると、がん細胞をやっつける力が弱まってくる。同時に加齢は「変異細胞」を作る原因にもなる。だから、年を取ると、がんになりやすいんですよ。

穴澤:健康な若い人でも毎日がん細胞ができているということですが、生まれたばっかりの赤ちゃんでもそうなんですか?

藤田:正確な個数まではわからないけど、だいたい生まれてすぐでも、がん細胞はできますよ。

穴澤:犬だって、がんになるでしょう。

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藤田:なりますね。

穴澤:自然界に生きる生物も、がんになるんでしょう? たとえば、サバンナのチーターもがんになったり。

藤田:なりますよ。発がん性物質は文明社会の方がずっと多いけど、自然界にもあるからね。あと、加齢はどの生きものにもあるものだから。

穴澤:寄生虫も、がんになるんですか?

藤田:どうだろう。そういう目で調べたことないから(笑)。でも、なるんじゃないかな。

穴澤:がんにならない生物っているんですか?

藤田:うーん、細胞が分裂して増えてアポトーシスで死んで、という流れがある以上、どうしても、がん細胞は出てくるでしょうね。

穴澤:疑問なんですけどね、がんって、不必要なものじゃないですか。いいことなんかひとつもない。自然界の流れの中で、どうして淘汰されないんでしょう。とてもがんが生物にとって必要だとは思えないんですが。

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藤田:必要はないんだけど、細胞が生まれて死ぬという過程には必ずつきまとうことなんだよ。たとえば、紙を100枚コピーしたら1枚ぐらいエラーがあったり、100枚はうまくいったけど1000枚だったらエラーが出た、というように、細胞が増えていくコピーの過程でも必ずエラーは起こってくるんです。

穴澤:あぁ、確かに。「完璧な人」なんていませんもんね(笑)。

藤田:そう(笑)。だけど、がん細胞が単体でいたって別に怖くないんですよ。それがどこかに定着して、どんどん増殖して塊(かたまり)を作っちゃう。それが腫瘍です。こうなって初めて「がん」と呼ぶわけです。

穴澤:団体行動が取れないヤツらが。団体を作っちゃうんですね(笑)。

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藤田:でもね、我々の身体というのはエラーが起こることを想定して、がんにならないためにさまざまな対策をしているわけですよ。それがさっきいった免疫だったり。

穴澤:免疫系のほかにもあるんですか?

藤田:ありますよ。「変異細胞」を「がん細胞」に変える「発がん促進物質」というのがあるといったでしょう。それとは、逆の働きをする物質もあるんです。

穴澤:では、次回はそのあたりのお話を聞かせてください。





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