免疫力とアレルギー(2)第3回
犬もかかるインフルエンザ。「インフルエンザ」って何者?
穴澤:これまで免疫力について話を続けてきましたが、季節的に外せない話題をひとつ質問してもいいですか?
藤田:いいですよ、何ですか?
穴澤:「風邪」と「インフルエンザ」の違いって何でしょう?
藤田:はっきり違うのは、「インフルエンザ」は「ウイルス性の風邪の一種」、「風邪」は「症候群」ということです。
穴澤:インフルエンザの原因がウイルスなのはなんとなく知っていましたけど、風邪は症候群なんですか?
藤田:風邪の大部分はウイルス性なんだけど、細菌性のものもあるし、特にこれといった原因がない場合もある。急に寒くなってクシャンクシャンいってるのも、風邪だからね。同じような症状を出すものを、総称で「風邪」といっているんです。
穴澤:鼻水、くしゃみ、のどの痛み、発熱とかそういうことですね。
藤田:そうです。インフルエンザの症状も最初は同じようなものなんですけど、それがなかなか治らなくて、ひどいときは気管支炎や肺炎になることもある。そういう重症になる可能性がある点が、風邪とは大きく違うところですね。
穴澤:免疫力の高い人はインフルエンザウイルスが入ってきても、やっつけちゃうものなんですか?
藤田:やっつけちゃいますよ。ワクチンも有効だし。
穴澤:どうして、インフルエンザウイルスって毎年流行する型が変わるんですか?
藤田:きっと免疫があるからでしょう。たとえば、今年インフルエンザウイルスの何型というのが流行ったとしたら、それに対して我々は免疫ができる。すると、次の年に同じ型のインフルエンザウイルスがやってきてもあまり流行らない。でもまた、違う型のインフルエンザウイルスがやってきたら、それに対してはまだ免疫がないから爆発的に増える、というしくみです。
穴澤:実際には去年と同じインフルエンザウイルスはやってきてはいるけれども、こっちがかからなくなったということなんでしょうか。
藤田:でしょうね。
穴澤:最近は犬もインフルエンザになるっていいますから、富士丸も気をつけないと。かかるときはかかるでしょうけど。
藤田:富士丸は丈夫そうだけどね!
穴澤:そもそもインフルエンザウイルスってどこからやってくるんですか?
藤田:インフルエンザウイルスのA型というのは、もともとカモの中にいる。でもカモは何ともないんですよ。何の症状も出ない。ところが同じ水鳥でもアヒルの中に入ると10羽中3羽ぐらいに症状が出る。それがニワトリに入ると全滅。感染する種が変わると、すごく病原性をもつことがあるんです。
穴澤:カモはインフルエンザウイルスがいても平気なんですか。
藤田:平気ですよ。ウイルスにもそれぞれ「ここで暮らしたい」という宿主がいるんです。インフルエンザウイルスのA型の場合はそれがカモで、カモには何の悪さもしない。でもそれが、別の生き物に入ると悪さをするんです。
穴澤:それはどこかで聞いた話のような……。
藤田:エボラウイルスも同じですよ。人に感染すると、エボラ出血熱という怖い病気になりますけど、あれはもともとアフリカのジャングルにいるミドリザルの中にいたウイルスなんです。
穴澤:ミドリザルは全身の穴という穴から血が噴き出したりしないんですか(笑)?
藤田:しませんよ(笑)。ミドリザルにとっては、いても平気なウイルスなんです。SARS(サーズ)も同じ。中国の山奥にいるハクビシンの中にいたウイルスで、ハクビシンは全く症状なし。
藤田:そうなんです。寄生虫も微生物も、みんなそうなんです。みんな好きなところがある。そこではもう宿主と共生しちゃって、いても邪魔しないし、むしろいてくれた方がいいという関係を築いているわけです。そうしないと、宿主だっていつまでもタダで場所を貸してくれないでしょ。
穴澤:何か宿主にも見返りがないと?
藤田:人だって腸の中に腸内細菌を持っているけど、ただで住まわせているわけじゃないでしょ。ちゃんと免疫力をもらってね。皮膚にいる菌にもちゃんと肌を守ってもらっていて、決してタダでは住まわせているわけではないから。
穴澤:で、自分の居心地が悪いところへ行くと悪さをすると。
藤田:そういうことです。
穴澤:ところで、ウイルスって生物なんですか?
藤田:「半生物」です。
穴澤:なんですか、その「半」という中途半端加減は(笑)。ウイルスって、単細胞生物でもないですよね。一体、何なんですか?
藤田:粒子、ですね。それ単体では生きていけないけど、どこかの細胞の中に入ると、生物と同じようなことをする。自分のコピーを増やしたり。でも、また外で出ると、粒子になる。
穴澤:変なヤツらですね(笑)。だけど、自分のコピーを作るということはDNAももっているんですよね?
藤田:DNA(デオキシリボ核酸)をもってるヤツばっかりじゃないですよ。RNA(リボ核酸)しかもたないヤツもいる。それをレトロウイルスっていうんですよ。エイズウイルスなんかもそう。
穴澤:エイズウイルスって、確か免疫系をダメにするんですよね。
藤田:そう、「Human Immunodeficiency Virus」の略で「HIV」。直訳すると「ヒト免疫不全ウイルス」。
穴澤:病名は「後天性免疫不全症候群」でしたっけ? エイズって結局免疫が落ちて、何でもないことで死んでしまうんですよね?
藤田:エイズウイルスはヘルパーT細胞にだけ感染して、ダメにしてしまう。ヘルパーT細胞というのは「Th1」も「Th2」も関係しているから、発症すれば免疫全体の機能がなくなっちゃう。その結果、トキソプラズマなんていう、だれにでもいて症状も出ないような菌に負けちゃうんです。
穴澤:免疫力がなくなるって、本当に怖いですよね。では、次回はいよいよ免疫力を高める方法などのお話を聞かせてください。

