免疫力とアレルギー(2) 第2回
人とミミズ、免疫力がより強いのはどっち?
穴澤:さて、現在市販されている花粉症の薬って、抗ヒスタミン薬が多いそうなんですが、それって花粉症の犬にも効くんですか?
藤田:効きますよ。もちろん、人とは違う分量を処方しないといけないと思いますが、体内で起こっている現象としては同じなので。
穴澤:抗ヒスタミン薬って、副作用は何があるんですか?
藤田:眠くなったり、機嫌が悪くなったり。私はのんだら機嫌が悪くなりますね(笑)。
穴澤:機嫌が悪くなるって、どういうメカニズムでそうなるんですか?
藤田:抗ヒスタミン薬といっても、ヒスタミンの働きだけをブロックしているのでは駄目なんですよ。ほかにもセロトニンだとか、さまざまな物質の働きを抑えているんです。全部並べていたら長いから、総称として抗ヒスタミン薬といっているだけでね。
穴澤:なるほど。で、結果的に脳内にあるセロトニンの働きも抑えてしまうから、安心や落ち着きを感じなくなって、機嫌が悪くなるというわけですか。
藤田:そう。本当は鼻やのどでアレルギー反応を起こしているセロトニンだけを抑えたいんだけど、同時に全身のセロトニンの働きを抑えてしまう。本当は脳内のセロトニンの働きは抑えたくないんだけども。
穴澤:「免疫力とアレルギー 第2回」で話していただきましたが、セロトニンって、脳内と粘膜では働きが違うんでしたよね。そこがやっかいですよね。
藤田:肥満細胞の中のセロトニンは安心感とは全く関係ないんですが、そこだけを抑えることはできないんですよ。
穴澤:セロトニンで思い出したんですけど、前にテレビ番組で老衰(ろうすい)で自然死した方と、うつ病で自殺した人の脳を比較していたのを見たことがあるんですよ。脳をスライスして特殊な液体に浸すとね、うつ病だった人の脳には、ほとんどセロトニンがなかったんですよ。精神状態と免疫力の因果関係って、どうなんでしょう?
藤田:それがちょっと難しい問題なんだけど、免疫には「Th1」と「Th2」があるといったでしょう。その2つのバランスがとれた状態が正常なんだけど、バランスが崩れると免疫システムが破綻してくるんですよ。その結果、自分の体の一部を異物だと勘違いして攻撃したり。
穴澤:「自己免疫疾患」というやつですね。
藤田:それと同じようなことが脳内で起こっているんじゃないかといわれていますね。
穴澤:正確なところはわかってないんですか?
藤田:わかってない。でも、免疫システムが破綻してくるとうつ状態になる、ということはわかっているんです。脳内でどういうことが起こっているかという詳しいことは、まだわかっていないんだけど。
穴澤:自分で自分の脳を攻撃しているかもしれないですよね。
藤田:どうだろうね。でも、ひょっとしたらセロトニンを生成する細胞を免疫システムが攻撃しているかもしれないというのは考えられるよね。
穴澤:犬にもセロトニンやドーパミンといった脳内物質はあるんでしょう?
藤田:ありますよ。働きも同じです。
穴澤:富士丸がうつ病にならないように注意しないと(笑)。ところで、ドーパミンは快楽、いわゆる「楽しい」とか「気持ちいい」ということを感じさせる脳内物質ですよね。
藤田:そうですよ。
穴澤:コカインとか覚醒剤(かくせいざい)に入ってるやつですよね?
藤田:よく知ってるね(笑)。
穴澤:そういう薬物を体に入れるということは、大量にドーパミンを入れるということですよね。なぜ、それがいけないんでしょう。いや、やりたいという意味ではなく、医学的に(笑)。
藤田:自分で作らなくなるからですよ。ドーパミンというのは自然な状態でも多少は自力で作っているんです。ところが、それが大量に入ってきたら自力で作ることを止めてしまう。すると、薬が入ってこない限り、楽しさも喜びも感じられなくなるから依存症になるんです。
穴澤:薬で入ってきても自力で作り続けることができれば、依存症にならないんじゃないですか?
藤田:たとえば、のむだけで成績を上げる薬があるとするでしょう? それをのめばテストの結果がよくなるような。薬をのめば成績が上がるなら、勉強なんてだれもしなくなるでしょ(笑)。
穴澤:絶対しない(笑)。
藤田:そんな不自然なことをしたら、本来しなくちゃいけないことをやらなくなるのは当然なんです。脳も同じ(笑)。だから、薬に頼りきって自力では機能しなくなる。
穴澤:これも昔テレビで見たんですけど、ある薬物依存に関する実験で、ネズミにチューブが刺さっているんですよ。で、カゴの中にあるレバーをガチャッと押すとドーパミンが直接体に流れるということを覚えさせるんですね。するとどうなるかというと、最終的にはずーっとレバーをガチャガチャ押す状態になるんです。ろくに眠りもせずに。
藤田:なるでしょうね。それがないと生きていけなくなりますから。
穴澤:なるほどー。だから駄目なのかぁ(笑)。それって一度薬物依存になっても、何とか止めることができれば、また自分でドーパミンを作れるようになるんですか?
藤田:作る力は戻ってきますよ。生きていくために必要な物質だからね。
穴澤:抗ヒスタミン薬の話から脱線しすぎましたね。いいんでしょうか、これで(笑)。
藤田:これはこれで大切なことですからね(笑)。
穴澤:ところで、生物によって比較的免疫力の強い生物はいるんですか。たとえばミミズの免疫システムはすごい、とか(笑)。
藤田:それはやっぱり高等動物になればなるほど免疫システムは複雑になっているから、鍛えようによっては免疫力も強くなるだろうね。ミミズは免疫システムも単純で鍛えようがないでしょう(笑)。
穴澤:そうなんだ。こういうのは意外に下等動物の方が強いんじゃないかと思っていたんですけど。
藤田:人間や犬なんかの方が免疫システムは発達していますよ。ただし、複雑すぎて、ヘタをすると自分の免疫で自分を攻撃することもある。鍛えれば、ミミズよりずっと強い免疫力をもっていますよ。
穴澤:では、脱線しながらも何とか今月中には免疫力の鍛え方についてお話を聞かせてください(笑)。
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3月のテーマは「がん」。
『PAFE japon』no.9の総力特集で取り上げた、がんの実態や予防法・治療法。読者の皆さんから、大きな反響をいただきました。というわけで、この対談でも、藤田センセと父ちゃんが、人とどうぶつのがんに迫ります。
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