におい 第3回
キンモクセイの香りは○○○のにおい? すり込みってコワイ
穴澤:そういえば、においは記憶との関係がとても深いんですよね。
藤田:そうですね。どういうわけか、五感の中では嗅覚が一番記憶との結びつきが深いですね。
穴澤:原付バイクの排気ガスとかのにおいをかぐと、なぜか高校の頃を思い出しますしね(笑)。
藤田:そういうことはありますね。ただね、においって、とてもあいまいな部分もあるんですよ。
穴澤:あいまいというのは?
藤田:ある人のにおいでも、好きなときは大好きなにおいなのに、嫌いになったら耐えられないにおいになったりするでしょう。
穴澤:あぁ、たしかに。万人がいいにおいだというにおいなんてありませんしね。
藤田:それに、においってすぐに慣れるんですよ。
穴澤:そうですね。ある部屋に入って「ん、ちょっとにおうな」と思っても、しばらくしたらわかんなくなりますもんね。たぶん、ボクも家が犬臭いのにきっと慣れてしまってると思いますよ(笑)。
藤田:昔ね、テレビ番組である実験をしたんですよ。まずね、コギャルといわれる女子高生を3人、牧場に連れて行ったんです。最初は、牛のウンチのにおいで「クサーい」とか「耐えられなーい」とか言ってたんですけど、3日目にはウンチがついた牛を愛情もってなでたりしていました(笑)。においって、それぐらい慣れるもんなんですよ。
穴澤:その場合、においだけじゃなくて、ウンチにも慣れちゃってますけどね(笑)。
藤田:そのほかにも、においっておもしろくて、昔トイレが臭いからってキンモクセイの芳香剤を置いてる家って多かったでしょう?
穴澤:ありましたね。今でもありますよ。
藤田:その香りが逆にすり込まれてしまって、外に生えてる本当のキンモクセイのにおいをかいでも、「あ、トイレのにおいだ」って思うようになったりしてね(笑)。
穴澤:そうですね(笑)。そういう錯覚に陥りますよね。
藤田:だから、あてにならないんですよ、においって(笑)。
穴澤:前にも聞きましたけど、ウンチが臭いと感じるのは人間だけなんですかね?
藤田:正確にはわかりませんけど、私が調べた範囲では、自分のウンチを嫌がるのはサルぐらいからなんですよ。
穴澤:サルは嫌がるんですか。
藤田:嫌がりますよ。カバとかだったら、自分のウンチがついてるものでもボリボリ食べますけど、サルぐらいから食べなくなるんですよね。
穴澤:臭いと思ってるんでしょうかね。
藤田:んー、どうでしょうね。ただ、高等動物になればなるほど、食糞(しょくふん)はしなくなりますね。
穴澤:富士丸は子犬のときやってましたから、きっと臭いとは思ってないんでしょうね(笑)。でも、「ウンチと微生物」の第1回でも話しましたけど、ウンチがくさいのにもちゃんと理由があるんですよね?
藤田:ウンチに限らず、自然界にあるにおいには、ちゃんと役割があるんですよ。
穴澤:花の香りだって、昆虫を呼び寄せるためですもんね。
藤田:そう。食虫植物なんかは、においでおびき寄せた虫を食べちゃうしね。
穴澤:そう! それ聞こうと思ってたんですよ!
藤田:何を?
穴澤:食虫植物ってね、なんで虫を食べる必要があるんですか? 植物なんだから、根からの栄養分や水分、光合成で生きていけるはずじゃないですか。なのに、なんで昆虫まで食べるんですか?
藤田:きっと栄養が少ない土地で、しょうがないから虫でも食べとくかって思ったんじゃない?
穴澤:思ったんじゃないって(笑)。その発想がすごいんですよ。いくら栄養が乏しいからって、昆虫でも食べようかっていう。植物なのに。それにね、あの壺みたいな葉の中に虫をポチャンと落として溶かして吸収するヤツはまだわかるんですよ。でも、葉が口みたいに、虫がとまるとバクッとやるヤツいるでしょ?
藤田:いますねー。
穴澤:あんなの反則ですよね(笑)。あいつら、何なんですか?
藤田:何なんでしょうね(笑)。変なヤツらですよね。だけどね、長い時間をかけてそうなっていったんだと思いますよ。栄養が少ない、どうしよう、幸い、目の前には虫がたくさんいる、こいつら食べよう。だけど、自分は動けないからおびき寄せないと、じゃあ、この香りでおびき寄せよう、ってね(笑)。
穴澤:うそーん(笑)。
藤田:そうやって生物は生きる選択をしてきたわけですよ。それぞれの環境でどうやって生きていこうか。本当に長い時間をかけて、少しずつね。寄生虫だって選択に迫られたはずですよ。寄生した方がいいのか、独立した方がいいのか。さらに、寄生した先で、カイチュウみたいにオスメス離れた方がいいのか、サナダ虫みたいにオスメス同体がいいのか。それは環境によって選択したわけですよ。
穴澤:自分で?
藤田:そうでしょう。だって、わからないことだらけですから。ヒト回虫はなぜ人間の体の中でないと生きられないのか。豚カイチュウと同じ姿かたちをしているのに。それはいくら調べてもわからないからね。それに、なぜ回虫は肝臓と肺を通って、体を回ってから、腸の中に住み着くのかもわからない。自然はわかんないことだらけですよ(笑)。
穴澤:ボク、それも不思議なんですよ。寄生虫が体内を移動するときって、痛みを伴わないじゃないですか。
藤田:そうそうそう(笑)。
穴澤:皮膚(ひふ)のすぐ下をはい回る寄生虫だって、痛くないでしょう?
藤田:そう、コブができる寄生虫だってね、痛くない。
穴澤:普通はそんな異物が体の中で動いたら、痛いはずじゃないですか。
藤田:痛いはずだよね。
穴澤:なんで痛くないんでしょう?
藤田:ね。
穴澤:ね、て(笑)。
藤田:まあ、そうでないと、やっぱり共生できないですからね。ほんとに生物の世界はわかんないことだらけなんですよ。だから、おもしろいんだけども。
穴澤:たしかに、おもしろいですけどね。不思議で仕方ないんですよ。おっと、今回は修復不能なぐらい脱線してしまいました(笑)。では次回、においについての締めをお願いします。

