免疫力とアレルギー 第1回
そもそもアレルギーってなんですか?
穴澤:9月のテーマは「免疫力とアレルギー」です。幸いボクと富士丸は、どっちもアレルギーがないんですが、困っている人やどうぶつ、本当に多いですよね。「元気丸」としては、避けては通れないテーマです。
藤田:どっからでもかかってきなさい。
穴澤:はい(笑)。ではまず、そもそもアレルギーって何なんですか?
藤田:簡単にいうと、体の中に寄生虫などの異物が入ってきたとき、それを排除しようとする働きから起こる症状ですね。
穴澤:異物を排除しようとする働き、ですか……。
藤田:そう。だけど、アレルギーを説明するなら免疫のシステムを理解してもらわないといけない。わかりました。今日は、私が穴澤くんにもわかるように免疫について「やさしく」説明しようじゃありませんか。
穴澤:なんだか授業みたいで楽しいです(笑)。
藤田:まずね、免疫反応を調節する細胞は「ヘルパーT細胞」といって、大きく2つに分かれます。それを「Th1(ティーエッチワン)細胞」と「Th2(ティーエッチツー)細胞」といいます。横文字がわかりにくかったら「1」と「2」でいいですよ。
穴澤: 「T」と「h」ぐらい、ボクだってわかりますよ(笑)。
藤田:それはよかった(笑)。「Th1」はあとの回で説明するとして、アレルギーに関係があるのは「Th2」の方です。こっちが異物を取り除こうとする働きをするんです。
穴澤:異物って?
藤田:私たちの身体から見て外部のモノということですね。寄生虫だって、ばい菌だって、はしかウイルスだって、体から見れば異物でしょう? 私たちの身体は、そういう異物が入ってきたら、やっつけるようにできているんです。
穴澤:どうやって、やっつけるんですか?
藤田:まず、食べちゃうんです。「マクロファージ」という食いしん坊がいてね。これが、はしかウイルスでも何でも食べちゃう。食べて、そのはしかウイルスの情報をヘルパーT細胞に伝えるんです。
穴澤:分析するんですね?
藤田:そう。で、今度、ヘルパーT細胞が、はしかウイルスの弱点を知ったうえで、「B細胞」というのに、敵をやっつける物質を出すように命令するんですよ。
穴澤:すごいこと、やってるんですね。
藤田:その一連の情報受信から命令を行っているのが、「Th2」なんですよ。
穴澤:なるほどー。
藤田:たとえば、はしかにかかったら、二度とかからないでしょう。それはもう弱点を知っているからなんです。その働きを応用したのが、ワクチンです。事前に、やっつける物質を作れる能力をつけさせるんです。その敵をやっつける物質を「抗体(こうたい)」といいます。ここまでは、大丈夫かな?
穴澤:大丈夫です(笑)。
藤田:抗体には2種類あってね、「IgG(アイジージー)抗体」と「IgE(アイジーイー)抗体」という物質があります。
穴澤:その2種類の違いはなんですか?
藤田:ウイルスや細菌をやっつけるのは、だいたい「IgG」、寄生虫やばい菌をやっつけるのは「IgE」、というように分かれているんです。
穴澤:ナイフで戦うか、ピストルで戦うかって感じなんですね。
藤田:ちょっと違うけどね(笑)。でね、問題は「IgE」の方なんですよ。これは「肥満細胞」にくっつくんです。肥満細胞っていうのは、鼻や気管支や皮膚(ひふ)や腸管なんかの粘膜にあって、「IgE」がくっついただけなら破けないんだけど、そこに異物がくっつくと破れるわけです。そうすると、中から「ヒスタミン」や「セロトニン」なんかの化学物質が出てくるんです。
穴澤:それが起きたら、どうなるんですか?
藤田:鼻で起こったら、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、気管支で起こったらぜんそく、皮下で起こったらアトピー性皮膚炎、となるわけです。
穴澤:本来、敵をやっつけようとしたはずなのに、自分を攻撃してしまってるんですね。それって、なんでなんですか?
藤田:寄生虫はウイルスなんかに比べたらずっと大きいでしょう? だから抗体だけではやっつけられないんですよ。そこで、肥満細胞の力を借りて「ヒスタミン」や「セロトニン」でやっつけようとしているんです。
穴澤:へぇ。だけど、教授は昔「キヨミちゃん」やら「ヒロミちゃん」といったサナダ虫をお腹に飼っていたじゃないですか(笑)。なんでキヨミちゃんは平気だったんですか?
藤田:そこがキヨミちゃんのすごいところなんですよ(笑)。彼ら寄生虫は、できれば人の体の中でぬくぬく暮らしたいわけですよ。で、長い人類との歴史の中で何をしたかっていうとね、自分が攻撃されないようにしたんですよ。
穴澤:どうやってですか?
藤田:まずね、「Th2」の信号伝達をブロックする物質を出すんです。すると、どうなるか。キヨミちゃんに対する情報がうまく伝わらなくなる。すると、B細胞は「変なIgE」を出すんですね。本当は「IgE」はキヨミちゃんをやっつけるために作られるものなのに、「変なIgE」は当の本人には全く無害な物質なんですよ。
穴澤:キヨミちゃん、すごいですね(笑)!
藤田:ただね、これはサナダ虫が人間との長い歴史の中で身につけてきた技で、他の寄生虫、つまり、人間と共生関係を築けていない寄生虫の場合は、ふつうにやっつけられちゃいます。犬回虫が人の身体の中では暮らせないのも、そういう理由。逆も同じ。犬には犬の、人には人の寄生虫がいるんです。そうやって、私たち生物はさまざまな寄生虫や皮膚常在菌、腸内細菌なんかと共生してきたわけです。
穴澤:皮膚常在菌や腸内細菌も同じなんですか?
藤田:そうですよ。人間の身体から見たら異物ですからね。だけど、今は共生しているでしょ。皮膚常在菌は私たちの肌を守ってくれている。それにね、さっきの「変なIgE」にはアレルギー反応を抑える働きがあることもわかったんです。
穴澤:あ、それは何となく知ってます。寄生虫がいるとアレルギーになりにくいんですよね?
藤田:そう。回虫の感染率の高いインドネシアでアトピーなんかないしね。はっきりしているのは、今の日本の清潔志向で、寄生虫もばい菌もみんないなくなっちゃって、「Th2」がヒマになって、本当は反応しなくていい花粉やホコリなんかにも反応するようになっちゃったということです。
穴澤:なるほど。では、次回はいろんなアレルギーについて詳しく聞かせてください。

