ウンチと微生物 第3回
ボクはまだキヨミちゃんたちと仲良くする勇気はないかな(笑)
穴澤:さて、ウンチの話も3週め。ところで、どうして下痢ってするんでしょう(笑)?
藤田:前回お話した腸内細菌のバランスの崩れもあるし、悪い菌の侵入ということもあるし、あとはストレス。
穴澤:ストレス?
藤田:腸管は広げると、広さはおよそ200平方メートル、テニスコートぐらいあるんですよ。そこに神経細胞がたくさんあるから、ストレスを感じるとすぐに反応して下痢になったりする。腸は第2の脳ともいわれているんですよ。
穴澤:第2の脳、ですか。
藤田:今ね、サラリーマンの間で「各駅停車症候群」というのがあるんですよ。毎朝、通勤途中にもよおして、必ず一駅ごとに降りて下痢をするっていう。それはもう完全にストレスが原因なんですよ。
穴澤:富士丸も最近はしなくなったんですけど、前はちょくちょく下痢していましたよ。毎日、散歩して、食べて、寝て、ストレスなんかほとんどないはずなのに!
藤田:でも、人間だってどうぶつだって、たまに下痢するぐらいのことはあると思いますよ。それが血便だったりしたら病院で診てもらった方がいいですが、生身の生きものなんだから、たまにはお腹ぐらい壊すでしょう。
穴澤:ボクは快便野郎ですが、お酒を毎日飲むから結構ゆるめです(笑)。
藤田:あとね、腸は免疫系としても重要な役割を果たしていて、免疫細胞の一部も腸でつくられるんですよ。
穴澤:腸って大切なんですね。でもね、そんな腸内細菌やら免疫細胞がたくさんいるところで、なぜ、先生のキヨミちゃんやサトミちゃんたちみたいなさなだ虫は生きられるんですか?
(注)キヨミちゃんやサトミちゃんたち:藤田センセの腸で、代々センセと共生していた有名なさなだ虫。
藤田:仲良くやれるみたいだね(笑)。
穴澤:なんでなんでしょうね。
藤田:さなだ虫は、宿主の自分に対する免疫力だけは落とせるわけですよ。それ以外はビタミンもつくってほしいし、免疫力もあげてほしいから、寄生した宿主に悪さもしないんですが。
穴澤:たとえばボクにさなだ虫がいたら、駆虫しなさいとは言わないってことですか?
藤田:言わないよ(笑)。それに今、さなだ虫に感染する方が難しいし。
穴澤:というのは?
藤田:さなだ虫って、人のウンチと一緒に卵を外へ出すんだけど、水洗便所で流してしまったら駄目。生き延びられないですね。川でウンチしないといけない。
穴澤:川の中でふ化して、まずケンミジンコの中へ入らないといけないんでしたっけ?
藤田:そうそう(笑)。ふ化したさなだ虫の幼虫はケンミジンコの中でしか発育できないんですよ。
穴澤:でもなんで、目もないさなだ虫の幼虫はミジンコにたどりつけるんでしょうね。
藤田:きっとほとんどの幼虫はたどり着けないけど、膨大な数の卵を産むからね。その一部が何とかミジンコにたどり着きたいと思って、こう、ちゃんとやってんじゃない?
穴澤:なんですか、ちゃんとって(笑)。
藤田:そりゃもう自然の力ですよ(笑)。で、さらにそのミジンコが河口付近でサクラマスに食べられないといけない。サクラマスっていってもサケだから、サーモンじゃないといけない。トラウト、つまりマスだと駄目。
穴澤:なんなんでしょう、そのこだわり!(笑)
藤田:今、日本では川でウンチなんてしないでしょう? だから北朝鮮の川でだれかがウンチをして、ミジンコ、サクラマスと移動しないといけない。ワタシはもう16年も前から、北上川や石狩川に登ってくるサクラマスを捕まえて調べているんだけど、10年ぐらい前は100匹中、約7匹はさなだ虫の卵が見つかっていたのに、4年前ぐらいから全く見つからなくなったんですよ。
穴澤:絶滅しつつあると。
藤田:だから、全国の内視鏡を見ている先生からさなだ虫に感染している人が見つかったと聞いたら、ワタシは飛んでいってね、説得するわけですよ。「あなたはコレステロールも高めだし、中性脂肪も多いから、それを食べてくれるさなだ虫を飼っておいた方がいいですよ」って。でもまず、「堕ろしてください」って言われちゃう(笑)。
穴澤: 「堕ろす」って言い方もすごいですけどね(笑)。
藤田:いったんは説得できても、帰って奥さんと相談したら「駆虫しないと離婚するって言われました」と戻ってくる(笑)。
穴澤:でも、おしりから白いの出たら嫌ですよ、ボクだって(笑)。
藤田:平和な共存はいいじゃない(笑)。
穴澤:まだ、ちょっとその勇気はないなー(笑)。
藤田:駄目だねぇ、穴澤くんも(笑)。
穴澤:ところで、さなだ虫って「痩せる」っていうイメージありますけど、日本にいるタイプは、たいして痩せないんですよね?
藤田:そう。オペラ歌手のマリアカラスがさなだ虫で激ヤセしたというのが有名だから、みんなそう思いがちだけど、しっかり調べてみたら日本と欧米ではさなだ虫の種類が違うことがわかったんですよ。欧米タイプは痩せて、貧血もひどくなります。
穴澤:しかも、欧米タイプは中間宿主がトラウトでも大丈夫なんでしたっけ?
藤田:そう。だから、簡単にいうと池があってミジンコとトラウトがいて、そこでウンチすれば欧米タイプのさなだ虫のサイクルは回るわけです。だけど、日本のさなだ虫はサーモンのような回遊魚が中間宿主だからそういうわけにはいかない。今はもうほとんどいないんじゃないでしょうか。
穴澤:今回は話が脱線しすぎてますかね(笑)
藤田:いやいや、自然界の生態系のサイクルでいえば、川でウンチするのもそれほど悪くないということですよ。長い歴史の中で、人間も腸内細菌やあらゆるばい菌や寄生虫と共存してきたわけですよ。それが人間だけの都合でね、汚い、ばっちいと排除してきた結果、アレルギーなど免疫力低下によるいろいろな問題が出てきたというわけです。
穴澤:では、次回はそのあたりのお話を聞かせてください。
『PAFE japon』関連号:
『PAFE japon』no.5(1月1日発行号)
「第2特集●2007年開運&快ウン特集 ウンチでわが子の健康チェック」から「どうぶつのよいウンチと悪いウンチの見分け方」をご紹介>>>
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