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がんのしくみとがん医療 第2回
良性と悪性って、何が違うんですか?
穴澤:さて、体内の免疫系以外で、がんを抑えるものがあるということですが、それはいったい、どんなものなんですか?
藤田:食べ物の中に含まれる物質です。それも植物性の物質ですね。
穴澤:具体的には、どんなものがあるんですか?
藤田:大きく分けると、色のついた植物に含まれるポリフェノールやカテロイド、海藻などに含まれるフコイダン、大根やわさびなどに含まれる辛み成分のイオウ化合物、キノコ類などの苦み成分であるテルペン類やβ-グルカン、ハーブの香りの成分であるテルペン類とフェノール類などがあります。
穴澤:覚えられないです(笑)。でも、そういう物質にがんを抑える力があるんですね。
藤田:そう。このような、がんへの抑制力があるような物質を総称して「ファイトケミカル」っていうんですよ。そうそう、ファイトケミカルには大豆に含まれるイソフラボンなんかもありますね。イソフラボンは女性に、とってもいいんですよ。
穴澤:どうして、イソフラボンが女性にいいんですか?
藤田:イソフラボンは女性ホルモンと同じ構造をしているからね。だから、大豆をちゃんと食べていると、乳がん、卵巣がん、子宮がんになりにくいということが、はっきりしているんです。
穴澤:へぇ、そうなんですね。ファイトケミカルに動物性のものはないんですか?
藤田:なぜか、みんな植物性なんだよね。
穴澤:じゃあ、肉食のどうぶつはファイトケミカルが摂れないですね。あ、自然界のどうぶつは草食どうぶつをまるごと食べるから、結果的には摂れているのか。
藤田:でしょうね。
穴澤:ファイトケミカルとは逆の「発がん性物質」や「発がん促進物質」って、自然界にも多少はあるということでしたけど、やっぱり文明社会の方が圧倒的に多いんですよね?
藤田:多いですよ。水道水に含まれるトリハロメタンなんかも「発がん性物質」だし。化学物質なんかにはとくに多いし、文明社会に浸れば浸るほど、「発がん性物質」に多く触れることになると思いますよ。
穴澤:ということは、いわゆる発展途上国の方が先進国よりがんになる確率が低いということですかね?
藤田:低いはずですけどね。というのは、難しいところがあって、発展途上国の方が平均寿命が短いということがあるから。他の病気にかかったりして。あと、医療面でもがんを見つけられなかったり。でもね、どう考えても文明社会の方ががんになる確率は高いと私は思うんですよ。
穴澤:日本の場合でいえば、がんは死因の1位でしょう?
藤田:3人にひとりががんで死んでるからね。脳卒中とか心筋梗塞(しんきんこうそく)が減ってきて、がんがぐーっと増えてきてるんです。
穴澤:そういう意味でいうと、自然界で暮らすどうぶつに比べて、犬とか猫は人と暮らしている分、がんになる確率も高くなっているんでしょうね。
藤田:だと思うよ。だって自然界のどうぶつに比べて、犬や猫の方が人間といる分、発がん性物質に触れる機会も多いから。あとは、昔と今では犬や猫の暮らしも変わってきたでしょう。きちんとフィラリア予防薬やワクチンなんかも打ったりして、健康になってる。
穴澤:そうですね。富士丸も、フィラリア予防薬や8種混合ワクチンをきちんとやってますから。
藤田:他の病気が減って寿命が延びた分、今度は加齢によってがんになることも増えてきたんじゃないかと思うんですよ。そういう意味で、犬も人間と同じになってきた。
穴澤:そうかもしれないですよね。富士丸だってもう6歳だし、注意しないといけないと思って、年に一度、健康診断に連れて行くことにしたんですよ。
藤田:富士丸もそうだけど、穴澤くんもきちんと健康診断受けた方がいいよ。
穴澤:あ、はい(笑)。
藤田:今度、私が検査してあげるから。
穴澤:あ、よろしくお願いします。ところでがん細胞がどこかに定着して塊(かたまり)になったのを「腫瘍」というんですよね。同じ腫瘍でも「良性」とか「悪性」とかいうじゃないですか。あれって、どういう違いなんですか?
藤田:良性というのはある程度増殖するけど、止まっちゃうヤツ。止まっちゃって、正常な臓器の機能は邪魔しない。悪性というのは、とにかく増え続けて、いろんな所へ転移しちゃうし、結果的に定着した場所の臓器を動かなくするやつですね。
穴澤:ということは、増殖力の違いで、良性か悪性かに分かれるわけですね。
藤田:そう、だから良性と悪性ってはっきり分かれているわけじゃなくて、ここぐらいまでなら大丈夫かな、ここぐらいだと危険かもしれない、というようなレベルがあるんですよ。
穴澤:それは何を見ればわかるんですか?
藤田:腫瘍からがん細胞を取って顕微鏡で見るわけ。良性と悪性で形が違うからね。
穴澤:区別がバシッと分かれているわけじゃないんですよね? だったら、この形に近づいてきたらヤバイぞ、というような感じなんですか?
藤田:ステージ1からステージ5とかがあるんですよ。細胞って、細胞膜があって、核があってという形があるでしょう。それを病理のプロが見る。で、切り取ってしまいましょうかとか、少し様子を見ましょうかとなるんです。
穴澤:じゃあ、犬の場合にも良性と悪性はあるんですか。
藤田:もちろん、ありますよ。
穴澤:がんって、肺にできたら「肺がん」、胃にできたら「胃がん」といいますけど、どうして「脳がん」とはいわないんですか?
藤田:それはね、脳の場合は、増殖しようがしまいが、そこに腫瘍ができたこと自体が問題なんですよ。いくら良性の腫瘍でも、たとえば言語中枢をつかさどる所にできたら言葉が話せなくなったり。だから脳の場合、腫瘍に良性も悪性もないんですよ。
穴澤:なるほど。脳に腫瘍ができるときって、大脳皮質とか表面だけじゃなくて海馬とか、もっと中の方にできることもあるんでしょう?
藤田:ありますよ。
穴澤:取りようがないじゃないですか。
藤田:取るのは、とても難しい。だから脳の奥の方にできたらダメだということになるけども、それを取れる名医が日本にひとりかふたりぐらいいるんだよね。ここまでなら取れる、という人が。
穴澤:どうやって取るんですか? 大脳をいったんゴソッとよけたりするんですか?
藤田:違う違う(笑)。安全なところからメスを入れるんです。そういう難しいことができる人がいるんですよ。
穴澤:脳の表面にできた場合だと、頭蓋骨に穴を開けて腫瘍を取るんですか?
藤田:うーん、脳でも影響が少ない所だといいんだけど、重要な働きをしている所に腫瘍ができたりするとね、できない。取ったら何が起こるかわからないから。
穴澤:脳って、まだまだわかってないことの方が多いっていいますものねぇ。おっといけない、個人的に聞きたいことばかり聞いてしまいました(笑)。では、次回はさらにボクが個人的に知りたいことについて、お話を聞かせてください(笑)。
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