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2007年12月26日
今日から、肉料理を作るときは、カタい水を使おう
穴澤:前回、“体にいい水”は理由づけができるという話で終わりましたが、それはどんな理由なんですか?
藤田:私はネパールの高原に暮らすフンザ族や、南米の高原地域に住むビルカバンバの人々といった、いわゆる長寿の村の人が普段どんな水を飲んでいるのか調べてみたんですよ。そしたら、いずれもカルシウムや鉄、銅、フッ素などのミネラルが多く含まれる硬水だったんですよ。
穴澤:長寿の秘密は、ミネラル豊富な水だったわけですか?
藤田:もちろんそれだけじゃないと思いますけど、水が大きな要因であることは間違いないでしょうね。だって、私たちは水がないと生きていけませんから。
穴澤:ところで、硬水と軟水ってありますけど、水の「硬度」って、何で決まるんですか?
藤田:硬度は、水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量で決まるんですよ。数値で表す場合は、「カルシウム量(mg/L)×2.5+マグネシウム量(mg/L)×4」で計算します。一般的に、この数値が100mg/L*以上を「硬水」、それ未満を「軟水」というんです。
*硬度:WHO(世界保健機関)の基準では、120mg/Lを基準に軟水と硬水を分ける。
穴澤:さっき、長寿の村の人は硬水を飲んでいたといっていましたけど、硬水だとどうして体にいいんでしょう。
藤田:万人にいいかどうかは、ひとまずおいといて、ひとつはカルシウムを多く含んでいるからです。私たちの体内のカルシウムの99%は、骨と歯として存在しているんです。血液中にあるカルシウムが足りなくなってくると、身体がSOS信号を出して、骨や歯からカルシウムを溶け出させて補うわけです。
穴澤:だから、カルシウムが不足すると、骨が弱くなって骨折しやすくなるんですね。
藤田:そう。そして本来なら、そのSOS信号は血液中のカルシウム量が十分になれば止まるはずなんだけど、年をとると、これがうまく止まらなくなることがあるんですね。そうすると、必要以上のカルシウムが血液中に溶け出して、それが血管の壁に付着して動脈硬化や心筋梗塞(こうそく)、脳卒中なんかの原因になるわけです。
穴澤:普段からカルシウムを多く含んだ水を飲んでおけば、そのSOS信号がそもそも出ないというわけですね。じゃあ、別に水でなくてもカルシウム自体を多くとればいいんじゃないですか?
藤田:もちろんそれでもいいんですが、注意しないといけないのは、いくらカルシウムがいいからってカルシウムだけを過度に摂取していると大変なことになるんです。さっき話した、必要以上にカルシウムが血液中にある状態に近くなってしまいますからね。
穴澤:なるほど。
藤田:そのカルシウムの蓄積を阻止するのが、マグネシウムなんです。大切なのはカルシウムだけでなく、マグネシウムもバランスよく取り込むこと。そういう意味で、硬水はいいと、こういうわけです。
穴澤:じゃあ、軟水より硬水の方が優秀なんですね。
藤田:ただ、そうとばかりは言えないんです。要は、向き不向きがあるんですよ。日本では軟水がほとんどだから、昔から軟水に慣れ親しんできたし、軟水は和食を作るのにも適しているわけです。硬水で和食を作ってもおいしくないですよ。
穴澤:水が食文化に影響しているんですか?
藤田:もちろんしていますよ。食文化というのは、水とつながっていますからね。洋食は硬水で作った方がおいしい。場所によって、硬水に合った食文化、軟水に合った食文化というのができてきたわけです。軟水の食文化である和食なんかは、コレステロールとか中性脂肪が溜まりにくい料理だから、別に軟水を飲んでいてよかったわけです。一方、ヨーロッパなどでは肉を多くとるから、コレステロールとか中性脂肪が溜まりやすい。だから、硬水でそれを抑えるというように、うまく調和がとれていたんですよ。
穴澤:うまくできているんですね、食文化と水の関係って。
藤田:ところが、食のグローバル化なんていって、日本人も肉料理をたくさん食べるようになったでしょ。じゃあ、水もグローバル化しないといけないわけですよ。
穴澤:確かに……。そういえば、ボクは家ではアルカリイオン水を飲んでいるですけど、あれって、本当に体にいいんですか?
藤田:いいといわれていますね。カルシウムもたくさん入っているし、私たちの体液と同じ弱アルカリ性。内臓にも負担がかからず、胃腸にもいいんですよ。
穴澤:素朴な疑問として、水道水ってどうなんですか?
藤田:生きた水とはいえないですね。殺菌消毒する過程で塩素をたくさん入れているし。塩素がたくさん入っているから、酸性に偏るでしょ。だから、それに苛性(かせい)ソーダを入れて中和してるんです。苛性ソーダの水っていったら、つまりは石けんの水だから。
穴澤:富士丸にはずっと水道水を飲ませているんですけど、水道水以外で富士丸に合う水というのも考えたほうがいいんでしょうか。
藤田:体質にもよりますから、一概には言えないけれど、かかりつけのお医者さんと話してみるのはありかもしれないですね。でも実際、日本ではミネラルウォーターも殺菌処理や熱処理をして作っているから、天然の生きている水ではないけど。
穴澤:海外は違うんですか。
藤田:ヨーロッパでは、殺菌・熱処理した水はミネラルウォーターではないですよ。でも、その分、環境保全も徹底されています。ともかく、飲み水はすごく大切。あと、もちろん人間も、体にいい水というのは、人それぞれですからね。冷え性の人にいい水、高血圧の人にいい水、ダイエットしたい人にいい水など、それぞれなんです。
穴澤:いや、今回は水についての認識が少し変わりました。これからは富士丸の飲み水も、少し考えてみようかな。高くつきそうだけど。
藤田:健康で長生きしてくれたほうがいいですもんね。本当は一度、コレステロールと中性脂肪を測ってみるといいですよ。そこから、獣医さんと相談して、富士丸に合った水を選んであげれば。さっきも言ったけれど、体にいい水は、人も犬もそれぞれだからね。
穴澤:水については、また機会をつくって詳しくやりたいですね。ひとまず今回は、ありがとうございました!
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2007年12月20日
雪解け水で、富士丸もますます元気になるかも?
藤田:ところで、穴澤くん。水って不思議な物質だってこと知ってる?
穴澤:水のどこが不思議なんですか?
藤田:まずね、グラスに入れた水に氷が浮くこと。これがおかしい。
穴澤:それって、ものすごく普通だと思うんですけど。
藤田:物理の常識では、液体の水より固体の氷のほうが密度が高い、つまり、より重いはずの氷が水に沈むのが自然なんですよ。固体のほうが、液体より軽い物質なんて、氷くらいなんです。
穴澤:へー、そうなんですね。あまりに日常的で、ボクには不思議でも何でもないんですけど(笑)。なぁ、富士丸。
藤田:……。では、不思議その2。水は「H2O」という化学記号だけど、実際の水は単純な「H2O」という構造ではなく、この水分子がお互いにくっついたり離れたりしているんですよ。
穴澤:そうなんですか? どういうふうに、くっついたり離れたりしてるんですか?
藤田:調べてみると「H2O」が5つくっついているときと6つくっついているときがあるみたいですね。
穴澤:みたいですねって(笑)。
藤田:いや、それ以上わからないんですよ。「H2O」が5つか6つくっついて、輪になったり枝状になったりしているというのはわかっているんだけれど、それが瞬時に離れたりくっついたりしてるんだから。
穴澤:「瞬時に」って、コップに入れた普通の水も、そんなことしてるんですか?
藤田:していますよ。1秒間に何万回という速さで。また「H2O」が5つとか6つくっついたのが、さらにグループになった「クラスター」というものがあることもわかっているんです。それでも実際のところ、水のことはまだまだわからないことだらけなんですよ。
穴澤:こんなに身近な水にまだわからないことがあるなんて、知りませんでした。コイツはどうでもいいみたいですけど。
藤田:……。それにね、分子レベルで見ると、水って意外にスカスカなんですよ。すき間が多いんです。
穴澤:「すき間」、ですか?
藤田:そう、そのすき間に、酸素や炭酸ガスやミネラルが入り込んでいるのが、私たちが普段、目にしている「水」というわけです。
穴澤:そういう物質を取り除いた「純水」とかあるじゃないですか。半導体を洗ったりするのに使われるっていう。あれって、飲んだらどうなるんですか?
藤田:吐き気をもよおすほどマズイですよ(笑)。「純水」が体にいいと思うのは大きな間違い。「純水」が入った水槽に魚を入れると、苦しそうに暴れて死んでしまいますから。富士丸にも飲ませちゃいけない。それはそうですよ、水に酸素が溶け込んでいないんだから。
穴澤:なるほど。てっきり体にいいのかと思っていました。
藤田:だから、そういう意味では蒸留水というのも、溶解物を取り除いた水という意味では同じでね、あまり身体にいいものではないんですよ。
穴澤:人やどうぶつにとっての普段の水って、必要な物質が適度に溶け込んでいるのがいいんですね。というか、そうじゃないといけないんですね。そうか、水はスカスカなんだぁ。
藤田:おもしろい現象があってね。水10mlに水を5ml加えると、当然15mlになるでしょう。だけど、水10mlにエタノールを5ml加えると、どうなると思う?
穴澤:どうなるんですか?
藤田:14.6mlにしかならないんですよ、温度25℃の場合。
穴澤:なぜっ?
藤田:エタノールが水分子のすき間に入るためだといわれていますよ。
穴澤:すごい(笑)。本当に水はスカスカなんですね。
藤田:これはお酒を造るときにも応用されているんです。ウイスキーなどを寝かせると味に丸みが出てくるというのは、水分子のすき間に細長いアルコールの分子が入り込んで、水分子に包み込まれちゃうからなんです。
穴澤:あぁ、よく何年モノとかいいますものね。あれはそういうことなんですか。おいしそうな話になってきた!
藤田:逆に新しいお酒は、アルコールの分子と水分子がバラバラに存在してるから、ツンツンした刺激のある味になるんです。60%のアルコール濃度の場合が一番水分子に入り込む率が高いということが最近の実験でわかったんですが、それはウイスキーの原酒のアルコール度が60%ということと合致するんです。
穴澤:昔の人はすごいですね。化学的なことは知らなくても、経験からその数字に至ったんでしょうね。
藤田:それに水には、いろんな力をもった水があることもわかっているんですよ。
穴澤:「力をもった水」ですか?
藤田:たとえば、雪解け水。これは種子の発芽を早めたり、ヒナの成長を早めたりすることが研究からはっきりしてるんです。どうぶつはみんな、このことを知っていますよ。
穴澤:どうぶつが知ってるって、どういうことですか? 富士丸もですか?
藤田:昔わが家にいたコロちゃんで実験したことあるんですよ。一方に水道水の入った器、もう一方に雪解け水が入った器を置くでしょう。すると、百発百中で雪解け水の方を飲みますよ。
穴澤:いろんな実験してますね(笑)。でも、どうしてでしょう。何かにおいが違うんですかね。
藤田:それはコロちゃんに聞いてみないとわからないですね(笑)。ただ、その雪解け水の力も5日ほどで消えてしまうんですよ。
穴澤:どうしてなんですか?
藤田:よくわからないんです。いくつか説はあるんですが、今はただ、そういう力があるということがわかっているだけ。
穴澤:よく「奇跡の水」とかあるじゃないですか。思いきり怪しいのが(笑)。あれって、どうなんですか?
藤田:私のところにもたくさん送られてきますよ(笑)。ただね、それがウソかどうかは最終的にはわからないんですよ。というのも、水の構造がよくわかっていないから解明できないんです。さっきも言ったように、水は絶えず姿を変えているから。
穴澤:いくらなんでも1本何万もするのは、ウソくさいですけどね(笑)。
藤田:それが普通の「水」だということはわかるんですよ。でも、ひょっとしたら神秘の力もあるのかもしれない。たとえば、「愛・地球博」でも紹介された「ナノバブルウォーター」はね、淡水魚の金魚と海水魚の鯛(たい)が同じ水槽で暮らせるんです。でも、医学的な証明はまだ。
穴澤:あぁ、それ見たことあります。あと、あまりに手際よくさばかれたとかで、半身の魚が泳いでるのとかも!
藤田:半身にさばかれて泳いでるのは、水のせいじゃないと思うけどね(笑)。とにかく、水が起こす不思議な現象や人工的に作った不思議な水はあるけれど、どうしてそうなるのかというのは、じつはよくわかっていないんですよ。
穴澤:なるほど。本当に水ってよくわからないんですね。ボクも富士丸も、毎日何気なく水を飲んでるけど。
藤田:ただね、世界には長寿の村というのがいくつかあるけど、そこの水を調べてみると、体にいい水というのは、ちゃんと理由づけができるんですよ。
穴澤:では、次回はその身体にいい水の話を中心に聞かせてください。
2007年12月11日
涙って、脳を守ってるんですね。すごい!(涙)
穴澤:第1回の話で少し気になっていることがあるんですが、のどの渇きを感じたり、浸透圧を管理していたりって、いったいどこでやってるんですか?
藤田:浸透圧を管理しているのは、脳の視床下部*にある「浸透圧レセプター」ってところですよ。
*視床下部:大脳の一部である間脳の中にあり、自律機能の調節を行う総合中枢。
穴澤:その浸透圧レセプターっていうのは、随時、体の中の浸透圧を監視して把握してるということなんですか?
藤田:そうですよ。浸透圧というは生死に関わる問題ですからね。
穴澤:では、のどの渇きを感じるのは?
藤田:心臓の左心房にある「ボリュームレセプター」というところで管理してるんです。そこでは文字どおりボリューム、つまり体内の液体の量を監視しているんです。
穴澤:で、水分が少なくなってくると、脳にそれを伝えて「水、飲みたい」と感じるわけですね。体って、いちいちすごいことしてますよね。
藤田:ほかにもいろいろなセンサーがあるんですよ。とくに脳は本当に活発に動いていますからね。
穴澤:犬にも浸透圧レセプターはあるんですか?
藤田:もちろんありますよ!
穴澤:たしか、人体の中では、脳が一番水分量が多いんですよね?
藤田:そう。脳というのは、やっぱり新陳代謝が非常に大切だから。水分がいろいろな代謝を促しているんだろうね。
穴澤:そういえば、教授の本の中に「目は脳の一部が直接外部に触れているようなものだ」というフレーズがあったんですが、それってどういうことですか?
藤田:実際、脳の一部が飛び出ているのが目だからね。脳と、こう、ビヨーンとつながってて。
穴澤:あ、そうだ。そういう図解を見たことあります!
藤田:大切な部分だから、涙で殺菌しているわけですよ。変な菌に感染すると、直接脳に行っちゃうから。
穴澤:涙って優秀なんですね。ばい菌がいる所に涙を1滴ぽちゃんと垂らしたら、やっつけちゃうんですよね。
藤田:やっつけちゃいますよ。それに、まばたきによって瞬時に膜を作るし。目は免疫的にいえば一番弱いところだから、涙で守っているんですよ。
穴澤:免疫的に弱いとは、どういうことですか?
藤田:抗体が一番来ないところなんです。だから、人間に間違って入っちゃった寄生虫も、最後には目に来るんですよ。
穴澤:それ、聞いたことあります。イヌカイチュウとかですよね。
藤田:そうそう。それ以外でも間違って人体に入っちゃった寄生虫で何とか生き延びたのは最終的に目に来ますね。ほかの所だと、抗体にやられちゃうから。
穴澤:あいつら、どうして目に抗体が来ないってわかるんでしょうね?
藤田:どうしてだろうね。逃げて逃げてどんどん追いやられて、たどり着くんじゃない?
穴澤:どうやって目の中に侵入するんですか?
藤田:血管から入っちゃうんですよ。
穴澤:目に入った寄生虫って、のぞき込むと見えるらしいですよね。
藤田:まぁ、それほど頻繁に起こることじゃないですけどね。
穴澤:あと、涙腺があるのは陸上の生物だけなんですってね?
藤田:そうですよ。カエルだって、おたまじゃくしのときは涙腺がなくて、カエルになると涙腺ができる。
穴澤:不思議ですよね(笑)。
藤田:不思議といえば、涙って成分的には尿や鼻水とほとんど同じなのに、涙だけ「美しい」といわれるよね。だいたい体内から出るものは、「ばっちい汚い」っていわれるのに。
穴澤:いいじゃないですか。別の意味で涙は美しいんですよ、たぶん(笑)。それはそうと、体液って成分は海水に近いんですよね?
藤田:そうなんですよ。人間や犬に限らず、生物の体液のイオン濃度の構成比は海水にとてもよく似ているんですよ。それは、生物が地球上に誕生した歴史を物語っているんだと思いますね。その歴史をお母さんのお腹の中にいる10カ月の間に再現しているんです。
穴澤:お腹の中で誕生したばかりの赤ちゃんの成長過程の写真とか見ると、ホントにそう思いますよね。
藤田:そう、まず海の中で単細胞生物が出現して、それが多細胞生物になって、魚になって……、最後にほ乳類が出てきたっていう歴史そのものですよね。羊水は海なんですよ。
穴澤:その海は約35億年前に誕生したといわれているんですが、そこから海水の質と量はほとんど変わっていないらしいですね。
藤田:そうですね。地球上にある水の97.5%は海水で、あとの2.5%が淡水なんですが、そのほとんどが高山などに氷として閉じこめられていて、私たち陸上生物が使用可能な地下水、湖沼水、河川水は、たった0.3%だといわれていますからね。
穴澤:そんなに少ないんですか?
藤田:そうなんですよ。それに世界では今、水不足で悩んでいる国が本当にたくさんあるんですよ。人間の基本的権利として1日1人当たり約20リットルの水が必要だといわれているんだけど、その量が得られない人がすごくたくさんいるんです。5リットル未満の人が発展途上国にはたくさんいる。
穴澤:身体自体に1日2.5リットルの水分が必要だというのに、全部含めて5リットルじゃあんまりですね。
藤田:一方、アメリカなんかは1人約570リットルも使ってる。オーストラリアで約500リットル。日本が約370リットルだそうですね。
穴澤:ボクもそうですけど、日本人は水がタダだと思っていますからね。
藤田:その点、ドイツとイギリスなんかは比較的少ないんですよ。どちらも170リットルぐらい。中国はもっと少なくて80リットル。
穴澤:その差はどこから来るんでしょうね。
藤田:やっぱり水を大切にしているかどうかでしょうね。
穴澤:では、次回はそんな「水そのもの」について詳しく聞かせてください。
【疑問・質問 募集中!】
新年1月のテーマは「食の安全」。
人もどうぶつも、食べものなしでは生きられない。
にもかかわらず、その食の安全性が、グラグラと大きな音を立てて揺らいでいます。
わが子も、もちろん自分も、安全でおいしいものを!
「食の安全」について、みなさんからのご意見、ご質問を募集中。もちろん、富士丸と父ちゃんへの質問も大歓迎です!
右上の「連載へのご意見・ご要望はこちら」に、どしどしお寄せください!
2007年12月05日
富士丸。快適生活にも、落とし穴ってあるんだぞ。
穴澤:今月のテーマはズバリ「水」なんですが、教授は水についても、いろいろな研究や調査をされているんですよね?
藤田:えぇ。最初は病原菌や伝染病を調べていたんですが、どうも水も関係があるぞということになりまして。
穴澤:これまでに、どのくらいの国の水を調査されたんですか?
藤田:60カ国は回りましたよ。さまざまな水を調査しに。
穴澤:いつも思いますけど、もの凄い探求心ですよね(笑)。
藤田:病気ですからね(笑)。
穴澤:さて、先月の「血液と血液型 第1回」でも伺いましたけど、成人の身体の約60%が水分なんですよね? 血液は15%以上失われると危ないという話なんですが、血じゃなくても体内の水分がどれぐらい失われると死んじゃうんですか?
藤田:いつも危機的な状況を突き詰めてくるね、キミは(笑)。人間でいうと、体重の10%の水分が失われると危機的状況になり、20%以上失うと死亡するといわれていますよ。
穴澤:普通に暮らしていると、ボクたちはだいたいどのくらいの水分を失っているんですか?
藤田:ウンチとかおしっことか汗で、何もしなくても約2.5リットルは体から出ていくといわれていますね。
穴澤:じゃあ、基本的に大人は1日2.5リットルの水分をとらないといけないということですか?
藤田:そうですね。体重70キロの人で、だいたい約40リットルの水分を体に蓄えているんです。そのうち、2.5リットルを毎日入れ替えているわけです。
穴澤:僕はわりと水を飲むほうですが、それでもそんなにたくさん水を飲んでる人って、あんまりいないと思いますけどね。
藤田:水そのものじゃなくても、食事とかにも水分は含まれているわけだから。とくに野菜なんかはね。
穴澤:あぁ、そうですよね。犬も体重に対しては人と同じぐらいの水分が必要なんでしょうかね?
藤田:恐らくそうでしょうね。たとえば、高さ50メートルの樹木は1日で190リットルもの水を吸い上げるそうですが、それを人間の体積に換算すると、じつは人間が1日に必要とする水分量、つまり2.5リットルとほぼ同じだそうですからね。犬でも猫でも、その比率は似たようなものだと思いますよ。
穴澤:出ていく水分に見合った水分補給をしないと、人も犬も脱水症状になるというわけですね。ところで、暑い地域では熱中症になる人が少ないって聞いたんですけど、それってどうしてなんですか?
藤田:人間の汗腺というのは、全部が機能しているわけじゃないんですよ。実際に汗を出すのは日本人の場合、全体の約6割で、それを「能動汗腺」というんです。能動汗腺の数は2~3歳までに決まるといわれていて、暑い地域に暮らす人は寒い地域に暮らす人より体温の上昇が激しいので、体温調整がスムーズに行えるよう、能動汗腺の数が多くなると考えられています。
穴澤:なるほどー。じゃあ、逆に小さいときからエアコン完備で暮らして汗腺を使わないでいると、能動汗腺が少なくなるということですね。
藤田:そうそう。汗で体温調節をする機能が弱くなる。だから、今の日本の若い人は「変温動物」っていわれるようになってるでしょ。寒い所に入れると体温が35度くらいになるし、暑い所へ入れると37度ぐらいになっちゃう。
穴澤:なるほど。快適生活というのも、それなりのリスクがあるんですね。ところで、教授はたしか2回ぐらい死にかけたことがあるんですよね?
藤田:ありますよ(笑)。1回はインドネシアのアンボンからブル島へ船で渡ろうとしたんだけど、暴風雨にあって漂流しちゃってね。三日三晩飲まず食わずで、もう本当に死ぬかと思いましたよ(笑)。
穴澤:凄まじい経験をしてますよね、学者なのに(笑)。
藤田:そのときは、人間はギリギリの状態に置かれると、欲しいモノは「水」だけなんだという貴重な経験をしましたよ(笑)。
穴澤:クウェートかどこかの砂漠でも死にかけていますよね?
藤田:そのときは、ひどい脱水症状になったんですよ。50度近い砂漠を歩いていたんだけど、20分もしたらひどい頭痛とめまいに襲われてねぇ。汗をかいているつもりはなかったんだけど、灼熱(しゃくねつ)の太陽の下、瞬時に蒸発していたんでしょうね。
穴澤:脱水症状になると、水だけではなかなか回復しないというのは本当なんですか?
藤田:本当ですよ。これは私も経験しましたが、水を飲んでも途中から飲めなくなるんですよ。これに関してはちゃんとした実験も行われていてね。被験者に脱水症状になるまで運動してもらい、その後、真水を飲んでもらうんですよ。そうすると、失われた脱水回復率が約50%のところで、ピタリと水が飲めなくなるんですよ。
穴澤:それはどうしてなんですか?
藤田:浸透圧の問題ですよ。
穴澤:浸透圧?
藤田:たとえば、不純物を通さない膜で真ん中を仕切った水そうがあるとするでしょう。その片方に海水1リットル、片方に真水1リットルを入れたとする。すると、濃度の低い方(真水)から、高い方(海水)へと水分子が移動して、同じ濃度になろうとするんです。この現象を「浸透」といって、染み込んでいく強さを「浸透圧」というんです。そして、浸透圧は濃度の差が激しいほど強いんです。
穴澤:あ、それ、どっかのテレビ番組で見たことあります。
藤田:体液の塩分濃度というのは約0.85%だけど、水分が失われていくと、この濃度がどんどん濃くなっていくわけです。そこへ真水が大量に入ってくると、水を通す膜、つまり細胞膜が浸透圧の影響で破裂しちゃう。だから、途中で水が飲めなくなるんです。
穴澤:水だけでは脱水症状がなかなか回復しないというのは、そういうことなんですね。
藤田:ただし、スポーツドリンクなんかだと、体液の塩分濃度に合わせてあったりするから、脱水回復率100%までグビグビ飲めますよ。
穴澤:それって、犬でも同じなんですよね。
藤田:同じでしょうね。
穴澤:だとしたら、夏の暑い日に犬が飲まなくなるまで水を飲ませたからって安心できないですね。
藤田:そうですね。犬も同じくスポーツドリンクを飲ませたほうが補給はしやすいですね。富士丸はスポーツドリンク飲む?
穴澤:あいつは、水以外飲もうとしないです(笑)。
藤田:ともかく、脱水症状のときは体内でそういうことが起きてる。危ないと思ったときには、自分で判断しないで病院に行ったほうがいいですよ。
穴澤:これから冬本番だってときに、思い切り季節感のない話になってしまいましたね(笑)。
藤田:ね。夏まで覚えててほしいですね(笑)。
穴澤:では、次回も季節感を無視した感じでお願いします(笑)。

