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2007年09月26日
薬や注射じゃなく、アレルギーを治す方法は……
穴澤:この「免疫力とアレルギー」の第1回で、寄生虫が出す物質が、結果的にアレルギーを抑えていたという話だったじゃないですか。
藤田:ええ。その物質もすでに特定はできているんですよ。
穴澤:その物質を直接飲めば、アレルギーは治まるんじゃないんですか?
藤田:治まりますよ。実験もしましたし。ただね、困ったことにそうすると「Th1」が小さくなるんですよ。
穴澤:出ましたね。「Th1」がやっと。「Th1」はどういう働きをするんですか?
藤田: 「Th1」というのは、おもにガン細胞をやっつけるための免疫系なんですね。だから、直接ガンを抑えるNK細胞*とか、インターフェロン*とか、キラーT細胞*なんかを出させる働きがあるんです。
*NK細胞:体内をパトロールし、ウイルス感染細胞やガン細胞を見つけると、単独で攻撃する。
*インターフェロン:ウイルス感染細胞でつくられるタンパク質。ウイルスの増殖を抑制し、抗腫瘍作用もある。
*キラーT細胞:異常な細胞を見つけて殺す働きをする。
穴澤:抗体をつくる「Th2」とは、働きが違うんですね。
藤田:そう。この「Th1」と「Th2」がお互いバランスをとっているのが免疫力です。このバランスがどちらに傾いてもいけない、というわけです。だって、アレルギーは治ったけどガンになったんじゃ、元も子もないですからね。バランスが肝心なんです。
穴澤:なんだぁ。じゃあ、寄生虫から夢の薬はできないんですね。
藤田:やろうと思えばできるんですけどね。「Th1」をあげる薬を同時に打てばいいだけですから。
穴澤:できるんですか?
藤田:ただね、それはどちらも注射じゃないといけないんです。同時に2本の注射を打たないといけないというのは、薬としてはちょっと問題があるわけですよ。
穴澤:やっぱり本物の回虫を飼った方がいいというわけですか。
藤田:それはもう無理でしょうね。回虫って、感染した人のウンチの中から卵を取り出して、飲んでもダメなんです。まず土の上で2週間以上放置されないと孵化(ふか)できない。今、もう人間の糞尿で有機栽培なんてしてないから、感染しようがないんです。サナダ虫もそうですが、もう日本は回虫も生きていけない社会になったわけなんですよ。
穴澤:日本ではサナダ虫も回虫も絶滅危惧種なんですね。
藤田:だからもう寄生虫や、寄生虫が出す物質でアレルギーを治そうというのは無理があるんです。そんなことするぐらいだったらBCGを打った方がいい。
穴澤:BCGって、あの子どものときに打たれた?
藤田:そうですよ。
穴澤:BCGがアトピーや花粉症に効くんですか?
藤田:効きますよ。BCGっていうのは結核のワクチンですから。要は、結核菌のすり潰しなんです。
穴澤:どうしてそれがアレルギーを抑えるんですか?
藤田:結核菌に対する「IgG」をたくさん作るようになるからですよ。「IgE」なんかつくってるヒマがなくなるというわけですね。
穴澤:だけど、ボクらの世代ってまだBCG注射が学校であったと思うんですが、それでも花粉症やアトピーの人っていますよ。それはどうしてですか?
藤田:結核に対する抗体がいつまでも続くわけじゃないからね。あと、BCGを1回打った人より、2回打った人の方がさらにアレルギーにならないんです。
穴澤:今、アレルギーに苦しんでいる人が病院に行って、BCG打ってくださいっていったら打ってくれるんですか?
藤田:どうでしょうね。普通のお医者さんは知らないから、難しいかもしれないですね。だけど、免疫学をやっている人なら知っていますよ、BCGがアレルギーを抑えるということは。
穴澤:どれぐらいの割合でよくなるんですか?
藤田:実際、ぜんそくの人にBCGを打ったら73%の人が治りましたから。アトピーも割合は同じぐらいです。
穴澤:BCGがアレルギーを治すなんて全然知りませんでした。
藤田:BCGがアレルギー治療に有効なことは、はっきりしてますよ。私は20年前から言ってるんですから。
穴澤:へぇー。それは驚きです。では、薬や注射ではなくアレルギーを治す方法というのは?
藤田:それはやっぱり免疫力をあげることでしょうね。
穴澤:免疫力をあげると攻撃力も増える気がするんですが、ますます花粉やホコリなど本来反応しなくていいモノに反応したりしないんですか?
藤田:それは大きな間違いでね、免疫力というのは「Th1」と「Th2」バランスなんですよ。バランスが取れていないから、「Th2」が変なモノに反応したりするんですよ。
穴澤:なるほどー!
藤田:シーソーでふたりの人がバランスをとっているとしましょう。子ども同士でもいいし、大人同士でもいいです。だけど、総重量は大人がバランスを取っている状態の方が大きいでしょう? それを免疫に置き換えればいいんです。免疫力をあげるというのは、シーソーでいえば子どもから大人に、さらにバランスは保ったままにするという意味なんです。
穴澤:なるほどー! しか言ってない気がする(笑)。
藤田:免疫力を高めるためには、前にもいったようなバランスの取れた食事をすること。それも防腐剤や食品添加物を避けて、なるべく手作りの食事をとること。あとは、メンタル面も大切なので、楽しく暮らすこと。
穴澤:楽しく暮らすと、免疫力ってあがるんですか?
藤田:あがりますよ。以前に実験したんですが、落語を聞くグループと、聞かないグループで、実験の終了後のNK細胞の量を測定したことがあるんです。そしたら、落語を聞いて笑ったグループの方はNK細胞が増えていたんです。
穴澤:笑うことって大切なんですね。
藤田:そう、ストレスを与えると免疫力は低下するっていいましたけど、その逆もあるわけです。毎日イライラしてる人より、ニコニコしている人の方がずっと免疫力はあがるんです。
穴澤:ま、それがなかなか難しい世の中なんですけどね(笑)。
藤田:そういう意味でも、どうぶつと暮らすのはいいことなんですよ。どうぶつと暮らしていると、自然と笑顔になったりするでしょう?
穴澤:あぁ、たしかに(笑)。
藤田:どうぶつたちにはそういう力があるんです。富士丸くんのおかげで穴澤くんも元気でいられるということなんですよ。感謝しなくちゃいけませんよ(笑)。
穴澤:はい(笑)。ちなみに、犬もバランスのとれた食事はもちろん、メンタル的にも自由に駆け回ったり、川で遊んだりしてると免疫力って高まるんですか?
藤田:そうですよ。免疫についていえば犬も人も同じですからね。いつも穴澤くんを健康に保っていてくれる富士丸くんと、ちゃんと遊んであげてくださいね。
穴澤:わかりました(笑)。では、なんだか、ボクが元気なのは全部富士丸のおかげ的な雰囲気になったところで、9月のテーマ「免疫力とアレルギー」を終わりたいと思います。教授、ありがとうございました!
藤田:こちらこそ(笑)。
【疑問・質問 募集中!】
10月のテーマは「におい」。
人もどうぶつも、生きものとして「におい」は自然なもの。
においは記憶や情緒・安心感と深ーい関係があったり、うんちやおならのにおいが健康のバロメーターにもなったり。
また、モノのにおいから食べられるかどうかを確かめたり、どうぶつは自分のにおいをなわばりに使ったり。生殖にも重要な役割を果たします。
清潔志向から、におい抹消の動きもありますが、こんな「におい」について、みなさんやわが子の疑問やお悩みを募集中。もちろん、富士丸と父ちゃんへの質問も大歓迎です!
右上の「連載へのご意見・ご要望はこちら」に、どしどしお寄せください!
2007年09月12日
お母さんのお腹で、赤ちゃんのアレルギー体質がつくられる?
穴澤:前回、どうぶつのいる家庭に生まれた子はアレルギーになりにくという話を伺いましたが、逆にこんな人がアレルギーになりやすいというのはあるんですか?
藤田:おもしろいデータがあってね、第一子はアレルギーになりやすいんですよ。逆に第二子、第三子はアレルギーになりにくい。
穴澤:それはどうしてなんですか?
藤田:最初の赤ちゃんはね、お母さんも心配だからおっぱいを消毒したり、ほ乳瓶を煮沸したりいろいろするんだけど、二番目、三番目になると、もう面倒くさくなってあんまりやらないみたいだね(笑)。
穴澤:あははは。ボク、三人姉弟の末っ子ですよ(笑)。
藤田:あとね、お母さんが働いているとアレルギーになりにくいというデータもありますよ。
穴澤:それはどうして?
藤田:お母さんがずっと家にいたら、子どもが落ちたものを拾って食べようとしても「ダメッ!」とか止めるでしょ。だけどお母さんが家にいないと、子どもは結構汚いことして遊んでるんでしょうね。どろんこ遊びなんかも怒られずにできるし。そんなことをしていると、強くなってアレルギーになりにくいんですよ。
穴澤:過保護すぎてもダメなんですね。
藤田:それもはっきりしていてね、江戸時代のお殿様の子どもの死亡率って、調べてみたらすごく高いんですよ。何食べるのにも毒味役がいて、生は怖いからとぜんぶ煮沸したもの食べさせてね。そうすると免疫力がどんどん落ちて、病気になっちゃうんですよ。
穴澤:読者からお便りのあった、今の学校給食の現場みたいですね。
藤田:私もそこが怖いと思っているんですよ。
穴澤:ボクの時代は、机の中にカチカチになったパンがいっぱい入ってるヤツとかいましたけどね(笑)。あと、ボク自身もよくドブ川に落ちたりしてましたよ。どろどろになって帰ると、オカンに「玄関で全部脱げー!」って怒鳴られたり。
藤田:お母さんは正しいと思うよ(笑)。ただね、今の時代の流れの中で、大事に大事に育てたいという気持ちも、もちろんわかるんだけど、そういう部分が逆に子どもを弱くすることだってあるということなんですよ。
穴澤:育った環境ではなく、生まれながらにアレルギー体質の人っているでしょう? そういう人はどうしてなんですか?
藤田:肥満細胞が破れやすい体質だとか、「IgE」*をたくさん作りやすい体質というのはたしかにあるんですよ。だから、アレルギーになる人・どうぶつと、ならない人・どうぶつには遺伝的な要素があるといえばあるんです。あるんだけれども、環境要因の方がずっと大きいんです。
*IgE:2種類の抗体「IgG抗体」と「IgE抗体」のひとつ。ウイルスや細菌をやっつけるのが、だいたい「IgG」、寄生虫やばい菌をやっつけるのが「IgE」。
穴澤:環境要因、ですか?
藤田:生まれながらにアレルギー体質という人の場合、お母さんのお腹の中にいるときの環境ですね。お母さんが、ひどいストレスを受けていたり、病気をして抗生物質をたくさん服用していたりした場合、生まれながらにアレルギー体質の赤ちゃんが生まれることが多いんです。
穴澤:たとえば、どんなストレスですか?
藤田:さっきいったように、本来なら最初の子どもの方がアレルギーになりやすい傾向があるんですよ。ただ、一番上は平気なのに、二番目の子がアレルギーになったという例では、二番目の子を妊娠しているときのお母さんの状態が影響している可能性が高いんです。私が実際に聞いたのは、二番目の子が妊娠しているときに、ご主人の転勤で、言葉も違う全く知らない土地で、子育てをしながら、友だちもいなくて、いつもイライラしていた、とかね。その後、生まれた子がすごいアトピーでね。
穴澤:お母さんの精神状態も影響するということですね。
藤田:そうなんです。兄弟でも、お母さんの影響で変わってきたりするんです。
穴澤:今、ひどいアトピーで苦しんでいる子どもって、本当にかわいそうだなぁと思うんですけどねぇ。治る方法とか、ないんですか?
藤田:私の知り合いでね、子どもがひどいアトピーで何をしても少しもよくならないって悩んでいる人がいたんですよ。それで私が「屋久島かどっかで暮らせば治るんじゃない」といったんですよ。すると、本当に家族で移住しちゃってね。そしたら、スカーッっと治ったんですよ。
穴澤:そんなこともあるんですね。あ、でもぼくも聞いたことありますけど、子どものアトピーの治療って、必ずほめるんですよね?
藤田:アトピーの名医っていわれている人は、みんなそうですよ。とにかくほめる。よくなってなくても「ちょっとよくなったね。すごいね、頑張ったね」って。すると、子どもはその気になって、治ってくるんです。
穴澤:なんでしょう。アレルギーや免疫力って、やっぱり精神的な面も影響するんでしょうか。
藤田:精神面での影響は約30%もあるんですよ。それだけ大切だということなんです。
穴澤:30%ですか!
藤田:たとえば、実験でいうとネズミがエサを食べようとするときに、しっぽに微量の電流を流すんです。するとね、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)*がグーンと下がる。つまり免疫力が低下するということなんですが、食べるという一番楽しみなときにストレスを与えると、非常に免疫力が落ちるんです。
*NK細胞:体内をパトロールし、ウイルス感染細胞やガン細胞を見つけると、単独で攻撃する。
穴澤:ご飯を食べているときに、嫌なこといっちゃダメなんですね。
藤田:だから、嫌な人とは食事しないことですよ(笑)。
穴澤:嫌な人とは飲まない(笑)。
藤田:だからね、私ほとんど飲みに行かなくなりましたよ。行くのは講演会の後の立食パーティーぐらい。今年になって飲みに行ったのなんて、穴澤くんひとりだけですよ。
穴澤:おぉ! なんと光栄な。楽しかったですよね、あの夜は(笑)。また行きましょうね。
藤田:行きましょう(笑)。
穴澤:では、脱線してしまいそうなので(笑)、次回は免疫力を高める具体的な方法と、アレルギーを治すにはどうしたらいいかという話を聞かせてください。
【疑問・質問 募集中!】
10月のテーマは「におい」。
人もどうぶつも、生きものとして「におい」は自然なもの。
においは記憶や情緒・安心感と深ーい関係があったり、うんちやおならのにおいが健康のバロメーターにもなったり。
また、モノのにおいから食べられるかどうかを確かめたり、どうぶつは自分のにおいをなわばりに使ったり。生殖にも重要な役割を果たします。
清潔志向から、におい抹消の動きもありますが、こんな「におい」について、みなさんやわが子の疑問やお悩みを募集中。もちろん、富士丸と父ちゃんへの質問も大歓迎です!
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富士丸、犬にアレルギーが増えてるのは、人と同じ理由だそうだ
穴澤:前回は「免疫力とアレルギー」の基本を教えていただいて、ありがとうございました。ボクね、アレルギーについて、前々から疑問に思っていたことがあるんですよ。
藤田:何ですか?
穴澤:アトピーとか花粉症などのアレルギーと、蕎麦(そば)アレルギーとか卵アレルギーって根本的には同じなんですか?
藤田:基本は同じですよ。蕎麦アレルギーの人は蕎麦粉に対して「IgE」抗体をつくっちゃうんですよ。
穴澤:猫アレルギーも?
藤田:猫アレルギーの場合は、猫の毛や皮膚に反応している場合がほとんどで、しくみは同じです。猫の毛や皮膚に対して「IgE」抗体をつくっちゃうんです。その「IgE」が鼻の粘膜にある肥満細胞の表面にくっついていて、猫の毛なんかが入ってくると破けちゃう。すると「ヒスタミン」や「セロトニン」が出て、というのは同じです。
穴澤:あとね、猫アレルギーでも犬アレルギーでも、猫や犬の種類によってアレルギー反応が出たり出なかったりって、あるんですか?
藤田:んー、どうでしょう。単純に毛の質が細かいかどうかという問題はあるでしょうね。吸い込みやすいかどうかということです。ほかに唾液(だえき)に反応する場合があるんですよ。この猫になめられるとかぶれるとか。そういうのは、種類によって違うみたいだね。
穴澤:それと、犬も花粉症やアトピーになったりするってよく聞くんですが、犬の場合のアレルギーも同じなんですか?
藤田:免疫の働きは同じだからね。あと、犬に花粉症やアトピーが増えてきたのは、人と同じ理由でしょうね。人と同じような生活をさせて、人と同じようなものを食べて。その結果、犬たちにもアレルギーが増えてきたんでしょうね。キレイ社会に住んでる犬とか猫しか、アトピーないからね。
穴澤:思うんですけどね、免疫は花粉を攻撃して意味あるんでしょうかね?
藤田:ないですよ(笑)。それに生きものじゃないから、花粉はどうにもならない。全く無駄ですよね。
穴澤:花粉症に関していえば、こういう今の清潔志向が招いたという説と、いやいや、花粉の量が増えてるんだよ、という説がありますが、どっちなんですか?
藤田:花粉の量は関係ありませんよ。それはニホンザルのデータを見ればわかるんです。花粉症になるサルの割合は、もうずっと変わってないんですよ。なのに、日本人はどんどん増えている。花粉の量が増えているっていうんなら、花粉症のサルも増えるはずでしょう。
穴澤:ですね。
藤田:で、調べてみたら、サルの寄生虫感染率はずっと80%なんですよ。いっぽう、日本人の寄生虫感染率は1950年代の62%から0%になってるんです。
穴澤:花粉症って、昔はなかったんですよね。
藤田:初めて報告されたのが、1963年ですから、まだ40年ほどですよね。
穴澤:サルにも昔は花粉症ってなかったんですか?
藤田:ありませんでしたよ。それがサルも少しずつ出てきた。出てきたけど、ある程度のところから、その割合ずっと変わってないということなんです。
穴澤:そのくしゃみや鼻水を出させる原因っていう「ヒスタミン」や「セロトニン」ですけど、「セロトニン」って脳内物質じゃなかったでしたっけ?
藤田:そうですよ。
穴澤:安心感などを感じさせる物質ですよね?
藤田:脳内と粘膜では「セロトニン」の働きが違うんですよ。同じ物質を粘膜では攻撃用として使っているんです。
穴澤:粘膜にいる「セロトニン」は武闘派なんですね(笑)。あとね、ボク、花粉症でもないし、全くアレルギーってないんですよ。なぜでしょうね。
藤田:それはほら、富士丸くんがいるから。それに子どもの頃から犬と暮らしたりしてきたでしょう? そういう人はアレルギーになりにくいんですよ。
穴澤:ある程度、不潔ですしね(笑)。
藤田:適当だしね(笑)。
穴澤:そんなことないですよ! この対談だって、毎回ちゃんと一所懸命やってるじゃないですか(笑)。
藤田:適当というのは、いいことなんですよ。なんでもほどほどにできるということは。今の人たちは、あれやらなきゃいけない、これやらなきゃいけない、と完璧を目指そうとするでしょ。清潔にするなら、とことんしないと気がすまないし。なんでもほどほどがいいんです。
穴澤:除菌っていっても、無菌にすることは不可能ですもんね。
藤田:そうです。犬なんかがいると、どろんこ遊びはするわ、ばい菌はくっつけてくるわで、自然と一緒に暮らしている人は強くなるんですよ。
穴澤:富士丸のおかげかぁ(笑)。
藤田:前にも言いましたが、これははっきりしてるんです。どうぶつと暮らしている家に生まれた子どもは、ずっとアレルギーになりにくいんです。
穴澤:あ、読者からの質問に、ある国で、ぜんそくの子がいる家庭がチワワと暮らすように医者から勧められたけどどうなんですか? というのがありましたよ。
藤田:それはたぶん、どうぶつがいる家庭に生まれた子どもにアレルギーが少ないというデータだけを見た間違った解釈でしょうね。たしかに、どうぶつがいる家に生まれると、アレルギーになる子どもは少ない。それはもう世界的にわかっていることです。ただし、すでにアレルギーをもっているなら、どうぶつと暮らしたら余計にひどくなる可能性が高いから、そこを注意しなくちゃいけませんね。
穴澤:そうなんですね。では、次回は、どんな人がアレルギーになりやすいか、また、どうすれば免疫力があがるのかというお話を聞かせてください。
2007年09月06日
そもそもアレルギーってなんですか?
穴澤:9月のテーマは「免疫力とアレルギー」です。幸いボクと富士丸は、どっちもアレルギーがないんですが、困っている人やどうぶつ、本当に多いですよね。「元気丸」としては、避けては通れないテーマです。
藤田:どっからでもかかってきなさい。
穴澤:はい(笑)。ではまず、そもそもアレルギーって何なんですか?
藤田:簡単にいうと、体の中に寄生虫などの異物が入ってきたとき、それを排除しようとする働きから起こる症状ですね。
穴澤:異物を排除しようとする働き、ですか……。
藤田:そう。だけど、アレルギーを説明するなら免疫のシステムを理解してもらわないといけない。わかりました。今日は、私が穴澤くんにもわかるように免疫について「やさしく」説明しようじゃありませんか。
穴澤:なんだか授業みたいで楽しいです(笑)。
藤田:まずね、免疫反応を調節する細胞は「ヘルパーT細胞」といって、大きく2つに分かれます。それを「Th1(ティーエッチワン)細胞」と「Th2(ティーエッチツー)細胞」といいます。横文字がわかりにくかったら「1」と「2」でいいですよ。
穴澤: 「T」と「h」ぐらい、ボクだってわかりますよ(笑)。
藤田:それはよかった(笑)。「Th1」はあとの回で説明するとして、アレルギーに関係があるのは「Th2」の方です。こっちが異物を取り除こうとする働きをするんです。
穴澤:異物って?
藤田:私たちの身体から見て外部のモノということですね。寄生虫だって、ばい菌だって、はしかウイルスだって、体から見れば異物でしょう? 私たちの身体は、そういう異物が入ってきたら、やっつけるようにできているんです。
穴澤:どうやって、やっつけるんですか?
藤田:まず、食べちゃうんです。「マクロファージ」という食いしん坊がいてね。これが、はしかウイルスでも何でも食べちゃう。食べて、そのはしかウイルスの情報をヘルパーT細胞に伝えるんです。
穴澤:分析するんですね?
藤田:そう。で、今度、ヘルパーT細胞が、はしかウイルスの弱点を知ったうえで、「B細胞」というのに、敵をやっつける物質を出すように命令するんですよ。
穴澤:すごいこと、やってるんですね。
藤田:その一連の情報受信から命令を行っているのが、「Th2」なんですよ。
穴澤:なるほどー。
藤田:たとえば、はしかにかかったら、二度とかからないでしょう。それはもう弱点を知っているからなんです。その働きを応用したのが、ワクチンです。事前に、やっつける物質を作れる能力をつけさせるんです。その敵をやっつける物質を「抗体(こうたい)」といいます。ここまでは、大丈夫かな?
穴澤:大丈夫です(笑)。
藤田:抗体には2種類あってね、「IgG(アイジージー)抗体」と「IgE(アイジーイー)抗体」という物質があります。
穴澤:その2種類の違いはなんですか?
藤田:ウイルスや細菌をやっつけるのは、だいたい「IgG」、寄生虫やばい菌をやっつけるのは「IgE」、というように分かれているんです。
穴澤:ナイフで戦うか、ピストルで戦うかって感じなんですね。
藤田:ちょっと違うけどね(笑)。でね、問題は「IgE」の方なんですよ。これは「肥満細胞」にくっつくんです。肥満細胞っていうのは、鼻や気管支や皮膚(ひふ)や腸管なんかの粘膜にあって、「IgE」がくっついただけなら破けないんだけど、そこに異物がくっつくと破れるわけです。そうすると、中から「ヒスタミン」や「セロトニン」なんかの化学物質が出てくるんです。
穴澤:それが起きたら、どうなるんですか?
藤田:鼻で起こったら、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、気管支で起こったらぜんそく、皮下で起こったらアトピー性皮膚炎、となるわけです。
穴澤:本来、敵をやっつけようとしたはずなのに、自分を攻撃してしまってるんですね。それって、なんでなんですか?
藤田:寄生虫はウイルスなんかに比べたらずっと大きいでしょう? だから抗体だけではやっつけられないんですよ。そこで、肥満細胞の力を借りて「ヒスタミン」や「セロトニン」でやっつけようとしているんです。
穴澤:へぇ。だけど、教授は昔「キヨミちゃん」やら「ヒロミちゃん」といったサナダ虫をお腹に飼っていたじゃないですか(笑)。なんでキヨミちゃんは平気だったんですか?
藤田:そこがキヨミちゃんのすごいところなんですよ(笑)。彼ら寄生虫は、できれば人の体の中でぬくぬく暮らしたいわけですよ。で、長い人類との歴史の中で何をしたかっていうとね、自分が攻撃されないようにしたんですよ。
穴澤:どうやってですか?
藤田:まずね、「Th2」の信号伝達をブロックする物質を出すんです。すると、どうなるか。キヨミちゃんに対する情報がうまく伝わらなくなる。すると、B細胞は「変なIgE」を出すんですね。本当は「IgE」はキヨミちゃんをやっつけるために作られるものなのに、「変なIgE」は当の本人には全く無害な物質なんですよ。
穴澤:キヨミちゃん、すごいですね(笑)!
藤田:ただね、これはサナダ虫が人間との長い歴史の中で身につけてきた技で、他の寄生虫、つまり、人間と共生関係を築けていない寄生虫の場合は、ふつうにやっつけられちゃいます。犬回虫が人の身体の中では暮らせないのも、そういう理由。逆も同じ。犬には犬の、人には人の寄生虫がいるんです。そうやって、私たち生物はさまざまな寄生虫や皮膚常在菌、腸内細菌なんかと共生してきたわけです。
穴澤:皮膚常在菌や腸内細菌も同じなんですか?
藤田:そうですよ。人間の身体から見たら異物ですからね。だけど、今は共生しているでしょ。皮膚常在菌は私たちの肌を守ってくれている。それにね、さっきの「変なIgE」にはアレルギー反応を抑える働きがあることもわかったんです。
穴澤:あ、それは何となく知ってます。寄生虫がいるとアレルギーになりにくいんですよね?
藤田:そう。回虫の感染率の高いインドネシアでアトピーなんかないしね。はっきりしているのは、今の日本の清潔志向で、寄生虫もばい菌もみんないなくなっちゃって、「Th2」がヒマになって、本当は反応しなくていい花粉やホコリなんかにも反応するようになっちゃったということです。
穴澤:なるほど。では、次回はいろんなアレルギーについて詳しく聞かせてください。

