2007年07月25日
富士丸よ、ほどよく不潔がよさそうだ!(笑)
穴澤:さて、「ズーノーシス」は今回が最終回なんですが、ここらで『PAFE japon』編集部に寄せられた読者からのズーノーシスに関する質問コーナーに行ってみたいと思います。教授、どうぞよろしく。
藤田:どうぞどうぞ(笑)。
穴澤:「ムツゴロウさんはどうぶつとの接触がすごいですが、彼はあれで大丈夫なんでしょうか」という質問です。どんな質問やねん(笑)。
藤田:彼はただのどうぶつ好きではなく、生物学者でもあるから、ちゃんと知っているんだと思いますよ。ズーノーシスのことも知っていて、自分の健康状態もわかった上でやっているんだと思います。
穴澤:真面目に答えていただいてありがとうございます(笑)。続いては「自分の具合が悪くて、ズーノーシスの一種かもしれないと思ったときは、いったいだれに相談したらいいのでしょうか」という質問です。
藤田:これはね、普通の人間のお医者さんに「どうぶつと暮らしています」というだけでも非常に違います。逆にそれを言わないと、いつまでたっても診断がつかないこともありますからね。
穴澤:なるほど。
藤田:ワタシの遠い親戚に、大の鳥好きという男の子がいてね。部屋中に鳥を放して暮らしていたんですよ、ところがそのうち風邪のような症状になって、肺炎みたいになって、内科へ行ってもなかなか治らない。ワタシの本も読んでいる彼は「これはオウム病かもしれない」と思って、担当の先生にそう伝えたんですよ。そしたら、その先生も一生懸命オウム病について調べてくれてね、どうもそうかもということになって、薬を少しだけ変えたんです。そしたら、スカーッと治ったんですよ。だからまず、どうぶつと暮らしていると伝えるだけでもずいぶん違います。
穴澤:そして、そもそもズーノーシスについて、どうぶつと暮らす人間側が、ある程度知識を持ちなさいよ、ということなんですね? そうすることで万が一の時にも診断もつきやすいし、予防だってできると。
藤田:そう。「知るワクチン」が大切だということです。
穴澤:確かにそうかもしれないですね。何もどうぶつが悪いわけじゃないですからね。
藤田:そうなんですよ。ワタシは今の日本では、どうぶつと暮らすのは、とてもいいと思っています。彼らといるだけで心が穏やかになるし、健康的な生活になって生活習慣病が治ったなんて例もある。ほかにも、脳卒中で体の自由がきかなくなった人も、どうぶつと接することでぐっと快復率が高くなるというデータもきちんとありますし。海外でも、どうぶつセラピーがさかんに行われていますしね。
穴澤:そうですね。ボクだって富士丸のおかげで健康になっている部分もあると思うんですよ。
藤田:あとね、こんなデータもあるんです。今、日本で生まれる子どもの43%がアトピーとかぜんそくだとか何らかのアレルギーをもっているんです。ただ、初めからどうぶつがいる家庭に生まれた場合、その割合がずっと低いんですよ。でも、アレルギーをもっている子どもの家でいきなりどうぶつと暮らし始めると、アレルギーが悪化したりするんです。たぶん、初めからどうぶつと暮らしている家族は、ほどよく、ばい菌とかに接しているからだとワタシは思うんですが。
穴澤:うちもね、いくらこまめに掃除してるっていっても抜け毛や砂は落ちてます(笑)。たぶん、ほどよく不潔なんでしょうね。そういえば、一度グルーミングした毛を集めたら、こんなに……。
藤田:だからワタシはしょっちゅう言ってるんですが、何でも抗菌や除菌ってやるのもいいけど、やりすぎると逆に弱くなるよと。だって、ひと言に「菌」っていっても、皮膚を守ってくれている菌もあるし、腸内細菌だってあるし。それを全部洗い落としてしまうと、本当に悪い菌と闘える抵抗力がなくなるんです。そういう意味でもね、これからの日本ではもっとどうぶつと暮らすのがいいと思うんですよ。
穴澤:そうかもしれないですね。それにボク、富士丸がいなかったらもっと不健康な生活を送っていると思うんですよ。毎日酒飲んで、昼頃起きてというような(笑)。でも富士丸がうるさいから朝から1時間ぐらい散歩する。
藤田:そんなこと、君ひとりだったら絶対しないでしょ。
穴澤:絶対しない(笑)。
藤田:だいたい結婚が面倒臭いっていってる人だからね(笑)。
穴澤:言ってませんよ(笑)!
藤田:だからね、ワタシが言いたいのは、どうぶつとお互いに幸せに暮らすために、ズーノーシスについてもきちんと知識をもって、自分の健康管理もどうぶつの健康管理もしっかりしましょうということなんです。そうすることで、ペットも私たちもいっそう楽しく暮らせますとね。
穴澤:でも、このズーノーシスについては、またいつかやらないといけないかもしれませんね。
藤田:そうですね。でも、自主的に調べたり聞いたりして知っておくというのも大事ですね。
穴澤:それでは、ひとまずありがとうございました。
藤田:富士丸くん、終わったよ。いい子で待ってたねぇ~。
『PAFE japon』関連号:
『PAFE japon』no.6(4月1日発行号)
「第2特集●うつさない、もらわない ズーノーシス・フリーな暮らし方」の前半ページをご紹介>>>
2007年07月18日
富士丸、寄生虫は宿主を大事にするそうだ。お前も……
穴澤:では、どうぶつからうつる怖~い病気の話ですけど。
藤田:そうですね。まずは「オウム病」が挙げられますね。
穴澤:オウム病って、どんな感染経路で、どんな症状なんですか?
藤田:感染源は鳥類全般。病原体はオウム病クラミジアです。鳥にいるときにはほとんど無症状なのですが、感染した鳥のフンなどを人が吸い込むことで人にも感染します。症状はインフルエンザに似ているんですが、インフルエンザの治療で使用する通常の抗生物質は効果がないため、症状が悪化して呼吸困難、重傷肺炎、髄膜炎などになり、死亡することもあります。
穴澤:ほとんどの鳥類にいるって怖いですね。
藤田:感染を防ぐには、鳥と暮らしている人なら、口移しでごはんをあげないことや、鳥カゴを掃除した後の手洗いが大切です。また、万が一、感染しても、オウム病を理解して適切な治療を受ければ完治するので、極端に怖がることもないでしょう。
穴澤:では次に、「エキノコックス症」とはどんな病気でしょう?
藤田:これは簡単にいうと、キタキツネにいるサナダ虫。それが犬にも寄生している例が出てきたんです。エキノコックスはキタキツネや犬の体内にいるうちは無害なんですが、それが人に入ると怖いんです。感染経路は感染したキツネが卵を含んだウンチをして、それを野ねずみが食べて、それを犬やキツネが食べるという流れ。人には、その卵を含んだウンチを触ったときにたまたま口から入ってしまったり、キツネの生息地で排泄物や卵を含んだ水を飲んでしまったりすることで感染する。症状は初期は無症状ですが、10年以上経過してから肝腫大で死に至ることもあります。
(注)肝腫大=肝臓が正常な範囲を超えて拡大する病気。
穴澤:犬やキツネには無害なんですよね?
藤田:そう。寄生虫で1つはっきりしているのは、自分の望んだ宿主は大切にするということ。でないと、自分も生き延びられないですからね。でも、それが違う生物の体に入ったときは悪さをするということなんです。
穴澤:居心地が悪いんでしょうね(笑)。
藤田:そこのところ、狂犬病っていうウイルスはタチが悪くてね、犬も人も死なせちゃう。
穴澤:感染した場合の死亡率って100%でしたっけ?
藤田:そう、確実に人も犬も死ぬんです。でも、発症する前にワクチンを打てば助かります。
穴澤:日本では撲滅したんですよね? それでもワクチンを打ち続けるのは?
藤田:だって、何があるかわからないでしょう? 世界では狂犬病がない国の方が少ないんです。お隣の中国なんて、感染病死亡率の1位が狂犬病なんですよ? 飛行機で2時間いったところでそうなんだから、いつ再上陸したっておかしくないじゃない。ほかにも狂犬病が蔓延している国はたくさんある。日本はせっかく撲滅したんだから、しっかり守ることが大切ですよ。
穴澤:海外に行って、日本の感覚で犬を触るのがちょっと怖くなりました(笑)。
藤田:触っても噛まれなければいいんだけどね。でも、そこはわからないから、安易に、はやめたほうがいい。
穴澤:ボクね、ちょっと疑問がわいたんですよ。
藤田:何?
穴澤:狂犬病にかかった犬って、凶暴になって、やたら噛むっていうじゃないですか。人に感染した場合だって、ある段階で暴れ出して人をひっかいたりするっていうし。でも、別に感染した犬がおとなしく死んでもいいじゃないですか。
藤田:凶暴になるのは、神経に行ってしまうため。ウイルスも生きものだから、どうやって子孫を残そうかって考えたら、狂わせて、次にまた感染してということを考えているんでしょうね。
穴澤:なるほど。でも、ウイルスみたいな小さいのが、犬や人の動きまで左右するってホントすごいですよね。寄生虫だってそう。犬回虫でしたっけ? 人間の子供に間違って入っちゃったときには、泥や砂を食べたがる症状が出ることがあるそうですよね?
藤田:「異味症」ですね。イヌ・ネコ回虫に子どもが感染した場合、ほぼ100%の子が起こす不思議な症状です。
穴澤:それって、イヌ回虫の仕業でしょう?
藤田:確かなことは言えませんが、やっぱり仲間を呼び寄せてるんでしょうね。泥や砂の中にある卵を体内に入れたいがために「泥、食え」ってやってるんでしょうね。
穴澤:それをどうやって命令してるんでしょうね、やつらは(笑)。
藤田:寄生虫はね、穴澤くんも知ってのとおりね(笑)、ものすごいことをやってるからね。アリから羊へ行きたい寄生虫はアリをコントロールして、羊が好きそうな草のてっぺんでずっと待たせたりするしね。
穴澤:カタツムリから鳥に行きたい寄生虫は、カタツムリの目をものすごい目立つカラーリングで、うにょうにょ動かしたりしますしね(笑)。
藤田:すごいことやってるよね、寄生虫って。
穴澤:不思議ですよねぇ~。
藤田:おもしろいよねぇ~。
穴澤:すっかり脱線しましたね(笑)。
藤田:しちゃったね(笑)。
穴澤:なんでしたっけ(笑)?
藤田:そう。狂犬病ワクチンはやっておきましょうね、ということですよ。備えあれば、憂いなし、です。
関連ページ:
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どうぶつ健保加入者の100万件を超えるデータから見た
どうぶつとの暮らし、「今」と「これから」
「犬の寄生虫疾患を検証 約1/4がズーノーシス!」はコチラ>>>
2007年07月12日
匂いが好きで、富士丸の毛に顔をうずめたりするんですけど。
穴澤:では、前回に続き、「ズーノーシス」についての第2回目です。まずね、ボクは富士丸とチューはしないんですよ。男同士だから(笑)。それって正解なんでしょうか。
藤田:んー、正解かどうかっていうと、まぁ、正解ですね。でも、ワタシは「絶対に犬とチューしちゃダメだ」とも思わないんですよ。
穴澤:へぇ。でも、人でも何でも「口の中が一番細菌が多い」というじゃないですか。
藤田:そう、細菌のレベルで「キレイか汚いか」というと、口の中が一番汚い。で、出した瞬間の尿はほぼ無菌なのでキレイということになりますね。
穴澤:ですよね。それに虫歯菌も親からうつる場合がほとんどだと思ってたんですが、人の虫歯菌は犬にはうつらないんですか?
藤田:虫歯菌はどうぶつみんな違いますから、まずうつりませんよ。
穴澤:そうなんですね。ボクがチューしないから、富士丸の歯はキレイだと思ってたのに(笑)。
藤田:たとえば、パスツレラ菌というのがあって、それは猫の口の中には100%いるんです。犬でも50~60%はいるんです。だから単純にチューするとその菌が入ってくる。ただ、それは犬や猫にとっては普通の菌で、口の中を守っている菌なんです。人が健康体ならそれが入っても何ともない。でも、人が弱っていて免疫力が落ちているときだと、感染することもあるんですね。
穴澤:パスツレラ症というやつですね。
藤田:それほど怖くはないし、健康ならまずかからない病気なので、そういうことを知っておいた上で、体調の悪いときにはチューはしない方がいいんじゃないでしょうか。
穴澤:あと、ボクは「犬の匂い」が好きなので、たまに富士丸の毛に顔をうずめたりするんですけど、そういうのは大丈夫でしょうか。
藤田:問題ないでしょう。犬にノミがいたらうつることはあるでしょうけど。それだって、健康な人なら、ちょっとかゆくなる程度です。
穴澤:一応、ノミやダニを寄せ付けない薬を富士丸にあげてるんですけど、そもそもノミってどこにいて、どういう経路で犬にうつるんですか?
藤田:今、日本にいるノミはネコノミばっかりなんですよ。昔はね、人には人ノミ、犬には犬ノミというのがいたんだけれど、今はなぜだかネコノミばっかりになっちゃった。それがね、人にも犬にもうつるようになったんですよ。
穴澤:じゃあ、野良猫と接触すると……。
藤田:あとは草むら。猫から落ちたノミが草の上なんかで待ちかまえているわけですよ。で、犬や人がそこへ入ると飛び移るんですね。
穴澤:あいつら、草の上でも生きられるんですね(笑)。
藤田:そう、ある程度は生きられる。畳の中なんかだと、もっと生きられる!
穴澤:ボクね、猫も大好きだから、よく公園で野良猫をなでたりするんですけど、その手で富士丸にさわるとノミがうつるんですかね?
藤田:なでたぐらいじゃうつらないでしょうね。それが衣服についたら、うつるかもしれませんが。
穴澤:そういう意味では、やっぱりノミがつかない薬は犬にあげておいた方がいいんですね。
藤田:そうですね。それにノミが媒介する「猫ひっかき病」なんかもあるし。「猫ひっかき病」というのは猫に噛まれたときやひっかかれた場合がほとんどなんですけど、犬からも10%ぐらいの割合で感染することがあるんです。傷口が膿んだりするので、猫や犬が悪いように思われがちですけど、あれはそこにくっついているノミの中に細菌が濃縮されているからなんです。ただ、それも人が健康体だと何ともありません。
穴澤:あとは、フィラリア予防薬。富士丸は錠剤をボリボリ食べる変わったヤツなんですけどね。これもあげといた方がいいんですよね。
藤田:そうですね。やっぱり長生きさせてあげたいですものね。
穴澤:フィラリアにかかると、最終的に死んじゃうんですよね?
藤田:フィラリアはイヌ糸状虫(しじょうちゅう)といって、蚊を媒介して最終的に犬に寄生する虫なんですよ。それが肺に移動するんだけど、数が多くなると血管を詰まらせちゃうんです。
穴澤:別に犬の体内で増殖するわけじゃないんですよね?
藤田:そうです。犬が蚊に刺される度に、体内にフィラリアの幼虫が入り、成長した親虫がミクロフィラリアという仔虫を血液中に生産するんです。そして、それをほかの蚊が吸い込んで、またほかの犬へというサイクルです。結果的に1頭の中の数が多くなると、血管を詰まらせる。
穴澤:フィラリアって、いったん犬に棲(す)み着いちゃうと駆除が難しいんですよね?
藤田:そう、だから予防薬は大切なんですよ。あと、まれにフィラリアが人にも感染したという例はありますし。
穴澤:清潔にしておくのはいいことだと思いますが、お風呂はどうなんでしょう。ボクはあまり頻繁に入れるのも逆によくないか、と月に1回ぐらいにしてるんですが。
藤田:洗いすぎるとやっぱり油なんかがとれて免疫力が落ちてしまい、アトピーなどになりやすいでしょうね。ただ、子犬のときは成犬にはいない犬回虫を持っている可能性があるんですよ。
穴澤:生後6カ月ぐらいまででしたっけ?
藤田:よく知ってるね(笑)。だから、子犬の体には犬回虫の卵がついていたりする可能性があるんです。それが人の口に入ったりすると「イヌ回虫症」になったりもするから、お風呂で洗ってあげるのはいいですね。あとは検査をして、子犬に虫がいるようなら駆除してあげた方がいい。
穴澤:つまり、ズーノーシスもしっかり知識をもって予防しておけば、防げるということなんですね。そうしていれば、スキンシップをとったって平気だと。
藤田:もうね、好きになったら仕方ないですよ。むしろ、そうなるのが普通だと思うんです。
穴澤:あははは(笑)。教授だってそうだったんですね。
藤田:やっぱりかわいいからね(笑)。
穴澤:では、次回はもうちょっと怖い話でもしてみますか。
2007年07月05日
「ズーノーシス」って、ボクと富士丸にも関係あります?
穴澤:いやー、いよいよ始まりましたね。
藤田:始まりましたね。
穴澤:ボクね、ずっと昔から教授のファンだったから、こうして対談できて、とても嬉しいんですよ。
藤田:ワタシのファンっていう人はね、だいたい変な人ばっかりなんですよ(笑)。だって出してる本だって「うんち」とか「寄生虫」の話がほとんどなんだから。
穴澤:確かに(笑)。でも、ボクのブログ「富士丸な日々」で教授のこと書いたら、「私もファンです!」ってコメントがたくさんありましたよ。
藤田:それはほら、類は友を呼ぶっていうでしょ(笑)。
穴澤:なるほど(笑)。でも、おかげでこうして教授と対談させてもらって感激ですよ。この連載は、ペット保険アニコムのグループ会社アニコム パフェのサイトで連載するんですけど、毎回、人とどうぶつの健康について、教授にいろいろお話をうかがおう!という企画なんです。で、今月のテーマが「ズーノーシス」。
藤田:「人畜共通感染症」のことですね。
穴澤:そうです。いきなり難しいテーマだなと思うんですが、ボクも富士丸という犬と暮らしていて興味があります。教授はズーノーシスについての著書も出されてますね。「ズーノーシス」って言葉を聞いたことはあるという人もいると思うんですが、簡単に説明するとどういうことなんでしょう。
藤田:簡単に言うと、「どうぶつと人の間でうつる病気」ということですね。
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ただね、こういうと誤解されやすいんですよ。
穴澤:というのは?
藤田:ズーノーシスが問題になって来たのって、15、6年ぐらい前からなんですよ。その頃から、どうぶつと暮らしている人の中で、長い間診断がつかない症状がいっぱい出てきた。調べてみても理由がわからない。その当時、人間の医者もズーノーシスなんてだれも知らない。でも、どうやらどうぶつが関係しているかもしれないということで、ワタシも研究を始めたわけです。けれど、その伝え方が難しい。
穴澤:たとえば?
藤田:こんなことがあったんです。10年ぐらい前にズーノーシスについてテレビでしゃべってくれという依頼が来たんです。そこでワタシは「オウム病」や「エキノコックス」、「犬回虫症」などについての話をしたんです。そしたら「こういう怖い病気がある」という部分だけが放送されてしまいましてね、放送後、ものすごい抗議がありましたよ。
穴澤:恐怖心をあおっているだけだというような?
藤田:そうなんです。ある方からのお便りには「教授はどうぶつがお嫌いなんですね? だから、家庭どうぶつのことを悪く言うんですね。そうやって危機感をあおると、怖くなってどうぶつを捨てる人が出てくることを少しは考えてください」というのもありました。そんなつもりで言ってはいないですし、第一、ワタシは犬も猫も大好きですからね。
穴澤:そうですよね。教授もコロちゃんという犬と暮らされてましたし、寄生虫まで「キヨミちゃん」という名前つけて自分のお腹で飼ってましたもんね(笑)。
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藤田:ほかにも、ある著名な作家さんからお手紙をいただいて「犬や猫はもう長い間人間と共に暮らしている。そこに感染する病気なんかがあれば、とっくに社会問題になっているはずだ。あなたのしていることは誇張だ」と言われたりしました。
穴澤:確かに、犬や猫は古くから人間の伴侶として一緒に暮らしていますよね。
藤田:でもね、昔と今では暮らし方が変わってきたんです。昔は犬なんかは外でつないでいて、家には上げないというのが普通でしたけど、ここ10年のペットブームで室内飼いは当たり前、一緒の布団で眠る、とういうようなスタイルになってきた。それは明らかに昔とは違う点なんですよ。
穴澤:確かにそうですね。
藤田:もう家庭どうぶつが子どもと変わらない存在になってきた。穴澤くんみたいに、狭いマンションで一緒に暮らしたりしてね。
藤田:犬がいればもう恋人なんかいらない、っていう人もいるし(笑)。
穴澤:そんなこと、ひと言も言ってませんけどね!
藤田:そういう生活の中で、次第にどうぶつと人の間でうつる病気があることがわかり始めたんですよ。でも、よく「それはあなたの猫から来てますね」と言うと、「うちの子が原因なわけないでしょ! このヤブ医者!」と言われちゃう(笑)。
穴澤:でも、昔に比べたら今はもうちょっと認識されてきたんじゃないですかね? アニコム パフェが発行してる『PAFE japon』の4月号でもズーノーシスの特集があったんですが、ズーノーシスのアンケートを実施したところ、2日で700件の熱い回答が返ってきて、改めて皆さんの関心が高いことがわかったと編集者が言ってましたよ。
藤田:10年前に比べたら、ずいぶんマシになったとは思いますよ。それにね、ワタシは危険だ危険だと叫んでいるわけではないんです。どうぶつからうつる病気で致死率が高いのは「狂犬病」「オウム病」「エキノコックス」の3つです。ほかはね、人の免疫力が下がっているときに特に注意したい、いわゆる「日和見(ひよりみ)感染」なんです。
穴澤:なるほど、まずは自分の健康管理をしっかりということですか。
藤田:それに、ズーノーシスの危険性を知らないのと知っているのでは全然違う。知識があれば防げるんです。つまり、「知るワクチン」ですね。ワタシはそうすることで、どうぶつも人もお互いに幸せになれるとお伝えしたいんです。
穴澤:今回の連載もそういう趣旨ですからね。では、次回はそれを踏まえた上で、さらに踏み込んだ具体的な話をしましょうか。

